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ハウス・オブ・グッチのkyonのレビュー・感想・評価

ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)
3.8
小規模な運送会社の娘パトリツィアはパーティーである男と出会う。彼はファッションブランドで巨万の富を得た一族グッチ家の子孫であった。持ち前の人懐こい明るさと美貌で彼を射止めたパトリツィアは、次第にグッチ一族の波瀾に満ちた権力抗争の渦中で糸を引く人物となっていく。

栄華を極めた一族の滅びの物語。血族主義や世襲制に囚われ破滅に導いたのは誰なのか。数多の策略を張り巡らせ邪魔者を排除したのはパトリツィアだが、彼女もまた排除される事になる。さらにその末に待ち受ける結末は痛烈で寓話のようであった。

贋作が露店で売られているのを知り激昂するパトリツィアだが、その贋作は彼女自身と重なる。そしてそれを彼女は決して認めたくは無いものの、自覚していたようにも思える。彼女も真の血族にはなれない事を自覚し、疎外感と屈辱感を覚えていた。だからこそ、一族の全てを得ようとしていたのだろう。
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