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カラーパープルのayellowbirdのレビュー・感想・評価

カラーパープル(2023年製作の映画)
3.6
S・スピルバーグが1985年に手がけた名作映画“カラーパープル”をミュージカル映画としてリメイク。ピュリッツァー賞を受賞したアリス・ウォーカーの同名小説と、ブロードウェイでロングランヒットを記録したミュージカル版をもとに再映画化。
横暴な父に虐待され、10代で望まぬ結婚を強いられた女性セリー。唯一の心の支えである妹とも離れ離れになり、不遇な日々を過ごしていた。そんな中、型破りな生き方の女性たちとの出会いや交流を通して自分の価値に目覚めたセリーは、不屈の精神で自らの人生を切り拓いていく…。

85年版のダイジェストのような作品! 85年版は、離れ離れになったセリーとネティ姉妹の40年にわたる苦難の人生が描かれ、その苦労が最後に報われる所が人々の感動を呼ぶ。しかし、本作は、要所要所でミュージカルシーンが差し込まれるため、セリーがミスターにもらわれていく経緯やネティがセリーを思って書き続けた手紙の内容など、恐らく尺の関係で割愛されているシーンが多い。また、ミュージカル映画ということで歌と躍りを見せることに重点が置かれて、85年版に見られる心理描写や過激な性描写も抑えられている。なので、確かにセリーは、苦難に満ちた人生を送ってきたのだが、それがどれくらいの期間、どの程度大変なものだったのかまでは伝わらない。その結果、最大の見せ場であるはずのセリーとネティが再開するシーンも、85年版のような “感情がほとばしる感動”を得ることが出来ない。演者の歌唱力やダンスは素晴らしいのだが、85年版が名作だっただけに、それだけでは物足りなさを感じてしまった。
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