ブラックマンバ

アクアマン/失われた王国のブラックマンバのレビュー・感想・評価

アクアマン/失われた王国(2023年製作の映画)
3.5
爽快な王道だった前作から大味な凡庸に転落した続編

冒頭から「あー、これどっかで見たな」と言いたくなる展開・絵面・台詞が最後まで垂れ流され続ける今作には、名作と呼ばれる作品に必須の”驚き”が全くと言っていいほどない。昨今のハリウッドのアクション映画は予算自体は大規模になればなる程、既に使用されたパターンを使い回すだけの”工場生産”的な内容になっていく現状の深刻さを、新年早々に痛感させられた。

いつの間にか生えてきた息子の子育てに四苦八苦するアクアマンの描かれ方は、既に似たようなプロットを出しておいた『ソー ラブ&サンダー』と比較するまでもなく、既存のお約束(テンプレート)以上の価値を持たない、物語的には全く無意味な場面だ。その息子も結局自立した人格や親を含めた他者との具体的な関わりを持たず、話を進める上での”小道具(マクガフィン)”としてしか扱われていないのが実態である。赤ん坊だからそういう展開を描きづらいというなら、そもそも年齢をあげればいいだけの話だ。
あとオールディーズの挿入とか幕間の軽口とか『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の三番四番煎じであることに目を瞑っても単純におもんない。もうそういうことを”するだけ”で客が反射的にウケてくれる時代は終わりかけている現実を、制作陣はちゃんと理解してくれ。

前作は特にカメラワークを始めた画作りに目を見張るものがあり、同年の競合作だった『アベンジャーズ/エンドゲーム』と比較しても決して見劣りしない出来栄えだった。それが今作ではどうしたことかその最大のアピールポイントが明らかにトーンダウンしている。一応そういったいい意味でめまぐるしく楽しいシーンもあるにはあるが、前作よりは少ない上に”そうでないシーン”との落差が露骨すぎる。
これは推測だが、今作は先頃、制作会社の経営体制見直しでシリーズ単位の仕切り直しが決まった、その丁度、転換期に制作されていた作品である。つまりこれまで今作が汲んでいた流れが終わることが決まった中で、今作は結果を出す以上に、出来るだけ早急にシリーズを畳むことを上層部からせっつかれていたのではないだろうか?
先に言った、どこか詰めきれていない内容のチグハグさはその突貫工事の結果なのでは?とどうしても邪推してしまうのは果たして自分だけだろうか…?せめてこれから始まる新しいDCシリーズの作品達が、この作品が払った犠牲に見合うだけの豊かさを持っていることを祈るのみである…
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