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クライ・マッチョのsanchangのレビュー・感想・評価

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)
3.4
狂った妻に虐待されている13歳の息子を連れ戻せとの命令でメキシコに友人の息子を迎えに行くイーストウッド。いきなり自宅に無断侵入してあっさり捕まる時点でなんじゃこれと。息子は野生児だから見つけれるもんなら見つけてみろとの妻の言葉だったが5分後にはあっさり見つかる展開。そしてこの息子の演技が下手で、わかりやすい表情変化に自らの境遇を説明的に嘆く独白など、およそ昨今のリアリティのある映画ではお目にかかれないような演出。さらには妻が放ったメキシコ人の追手が3度も90歳過ぎのジジイに逃げられるという無茶な展開など、なかなか無理があるシーンが多いと思ったが、じゃあこの映画が嫌いかというと全くそんなことはなくて、エンドロールが流れた瞬間、アジアの東端に住む私のような人間にとってはまるでファンタジーのようなノスタルジックアメリカに誘ってくれてありがとうという気分だった。イーストウッドのホームである、カウボーイや西部劇の世界観を描きながら、メキシコ〜テキサスへの荒野を走るロードムービーであり、マッチョイズムからのアップデートという意味ではアメリカンニューシネマ的な精神を持つこの作品は、死ぬ間際に好き放題やってやったぜという意味でもたしかにイーストウッドの集大成と言えるのかもしれないと思ったので、なんやかんやでまあまあ好きです。
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