ゆずきよ

マイ・ダディのゆずきよのレビュー・感想・評価

マイ・ダディ(2021年製作の映画)
3.7
見たいなと思ってはいたけれど手が出せなかった作品です。
意外にもこれが映画初主演のムロツヨシ。
病気をテーマにした映画は泣かそう泣かそうとし過ぎるんですけど、結局最後には泣いちゃうんですよね。

物語は、ガソリンスタンドで働く牧師ムロツヨシの娘である中田乃愛が白血病で倒れるという所から始まります。
牧師さんもそれだけじゃ食べていくのが難しい時代ですよね。
その一方で奈緒演じる売れないミュージシャンと同棲中の江津子のエピソードも合間に差し込まれていきます。
やがてこの2つの物語は交錯していくのですが、初見だと中々良い仕掛けだと思いました。前半の山場の1つですね。
ただどうしても別れから結婚のスパンが短か過ぎてそこが上手く飲み込めませんでした。
この先の良い展開もその異物が喉に引っかかり消化に時間がかかってしまいます。
嫌なやつの雰囲気を醸し出していたキャラクターも一瞬でただの良いやつになっていたり、細かい部分で気になる所はありますし、要素が多過ぎて情報過多になってしまった所もありますが、俳優さんの演技が良くてスルスル観れました。
ムロツヨシは少し濃い演技ではありましたが。
エピソードと展開が多いので中盤もダレる箇所は少なく良かったです。
ムロツヨシが少しずつ病んでいく部分に関しては胸が締め付けられる想いでした。
それにしてもちくわカレーをそんなに引っ張るとは…。
現在と過去の映像が交錯する演出が個人的に好きなんです。
劇中の一幕ですが、幼い子供って聞いていない様でちゃんと聞いています。
誰かが言っていた『子供の記憶は彫刻で、大人は油絵』という言葉は正にその通りだと思いました。
ラストはどう頑張ってもネタバレになってしまうので言えないなぁ。
やっぱりこの手の映画のエンディングは斉藤和義だよねと思ったらシトーンズでしたか。
エンドロール後の一工夫があった事で評価は1つ上がった感じです。

実は私の知り合いに幼い子を白血病で亡くした方がいます。
私は直接その子とお会いした事はありませんでしたが、治療の様子を聞いたり病室での写真を見ていたので、訃報を聞いた時は恥ずかしながら少し泣いてしまいました。
私でさえその有様でしたので、ご両親の心中や察して余りある事です。
我が子の成長に感謝しつつ、いつ何時何が起きてもきっと後悔はしてしまうけれど、悔いの無い様に生きていこうと思いました。
ゆずきよ

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