ぎにょる

ひらいてのぎにょるのレビュー・感想・評価

ひらいて(2021年製作の映画)
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悪い意味じゃなく原作よりあざといというか狙い目がはっきりしててピンポイントでピントが合った世界の輪郭がハッキリしているのに原作より生々しくないと言う凄く不思議な距離感の作品で世界に0.3%くらいピンクスモークが立ち込めている感じがした。破滅型シンドロームを拗らせた女の子の激情型恋愛譚なのだけれど恋心を望遠鏡で肉体を顕微鏡で見つめる様な精神に対する眼差しと細部を見る眼差しが乖離していて、それを割と適切に的確に映像に落とし込んであったと思う。身体から心までの加速度が最早テレポーテーションで凄まじい。そこに省略され凝縮されている時間と空間のやわらかいかたまり。〈ひらいて〉の中には人を打つ「平手」も人を打ちのめす「否定」も隠されているけれど、それさえもあけすけにするひらがなに開かれた〈ひらいて〉という投げ掛けは対象を持たない信仰の願掛けのように純粋でやわらかい。これは漢字の「開いて」では味気がないのだ。そして何より兎にも角にも山田杏奈さんが素晴らしい。
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