Mabune

偶然と想像のMabuneのレビュー・感想・評価

偶然と想像(2021年製作の映画)
5.0
偶然というのは、その時代に生きる人間が科学的に証明できない事象のことを人間がそう認識しているものであると思う。
例えば大昔の人は死因も天気が変わる理由も分からず、人知を超えたもの/あるいは偶然として認識していただろう。今で言うと街でばったり友達と会う事は偶然の出来事と認識されるが、100年後には行動データの分析によって街で友達と出くわす確率が分かり、それも偶然とは認識されなくなるかもしれない。
そうした偶然というものに価値を付与するのは人間の想像によってである。「この出来事は運命だ」とか、「あの出来事によって救われた」とか、想像によってただの事象を価値あるものに昇華させる。
科学技術が発展するにつれ、偶然は見えにくくなっていく。でもその偶然こそが、人間の想像力や表現力が発揮される余地であり、とても貴重な隙間なのだと思う。
偶然と想像は、そういう話だと思った。偶然というものの煌めきと想像の愛らしさ。珍しく、これからも生き続けてみようと元気が出た。
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