シッカン

映画:フィッシュマンズのシッカンのネタバレレビュー・内容・結末

映画:フィッシュマンズ(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

思ったより冷静に見れた事が少しショックです。

ここ数年、自分は変わったと思う。過去の自己中な自分への反省、映画への興味、政治に対する成人としての責任感の芽生えから、どこか直接的な社会的メッセージというものが、芸術作品に必須の要素だと思うようになっていたのかもしれない。

そして、フィッシュマンズにハマっていた過去の自分自身を、恥ずかしいクソガキとして、別人として扱っていたのだと思う。それが成長なのだと思っていたが、久々にフィッシュマンズに向き合い、そうじゃないんだと気づいた。

俺にとってのフィッシュマンズ、佐藤伸治の凄さは、1時間後には忘れてしまうような気持ちを表現している事だと思う。
普段ボーッと考え事をしている中で浮かぶ素敵な気付きや考え、でも後から思い出したり人に話したりすると大したことでは無い、でもその時の自分にはとっても大切に思える刹那的な気持ちをすくいとってくれる音楽。
これは、社会人になり、テレビやネットのニュースに一喜一憂し、毎晩自分と向き合う事を避けて酒を飲み、酔っ払ってヒップホップを聴く今の俺には無い大切な事だと思う。

神様のように思ってた佐藤伸治という人が、それでも当たり前に持ち合わせていた人間としての悩みや葛藤が伝わった。
俺の中で神様から人間になった佐藤伸治。
だからこそ、それでも自分自身に向き合い続け、それを音楽で表現した佐藤伸治に、昔とは違う尊敬の念を感じる。あと4年で同い年か。

映画全体は、フィッシュマンズ的には良かったと思う。ロングシーズンみたいな映画だよね。季節のように順番があるようで、自由自在に過去にも未来にも飛ぶ。We are not four seasons.

印象に残ったのは、ライブ本番前にメンバーでしゃがんで打ち合わせをしているシーン。きっちりバンドだったんだな。それと、話にしか聞いた事が無かった音楽葬のシーン。
映像で見せてくれて、本当にありがとうございます。しっかり心に刻みました。

またいつか、墓参りに行きます。
その時にはどんな自分になっているんだろう。いや、フィッシュマンズへの気持ちなんて忘れちゃうのかもな。
シッカン

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