怪鳥音

茜色に焼かれるの怪鳥音のレビュー・感想・評価

茜色に焼かれる(2021年製作の映画)
1.3
もちろん、マスクをつけている人々が映ったり、コロナ禍で潰れたカフェの存在が示されることによって、その映画がコロナの時代を映しとったことにはならない。

この映画で唯一コロナ禍を感じさせるのは、自分の演劇をリモートで観る息子の素っ頓狂なリアクションを、母が目にすることが出来ず走り続ける場面のみである。何という皮肉、分断。
噴飯ものの「アングラ」風演劇であるが、自称「社会に怒っている」セクハラロッカー達が心酔するぐらいだから、暫く芝居から遠ざかっていたとはいえ、この程度で妥当なんだろう。
息子は「町田くん」に引き続き隠れマッチョなのだけれども、母のストレート過ぎる演技の意図を理解できない頭でっかちで将来が心配。
これでもかと続く露悪的な描写の結末として親子のディスコミュニケーション(ラストで描かれるシーンが親子の健全なコミュニケーションとは思えない程には私はコロナ禍での生きづらさを感じている)をポップに見せられるのは壮絶なギャグなのか、観客への嫌がらせなのか、本当に理解に苦しむ。

この作品をピンサロで働いている人が見てどういう感想を抱くのか。

これは誰に怒っていいか分からない疎外感の映画だと思う。結局気持ち悪い既婚男性相手にしか勇気を持って怒りをぶつけることが出来ないという情けない頭でっかちな大人の映画かしら。そう思うと多少の同情はしたくなる。

しかし、感動であれ怒りであれ、扇情的なだけの作品には断固としてノーを突きつけたいところである。
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