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Izmena(原題)のSのレビュー・感想・評価

Izmena(原題)(2012年製作の映画)
4.5
 映画の半分くらいのところでアクシデントのように不倫した男女は死んでしまって、今度は不倫されていた男女の不貞の物語になっていく……と思いきや、シームレスに時間が飛んで過去と現在がつぎはぎになって、いま見ているのがどの男女の話なのかと混乱を起こさせるように構成されている。特定の男女のドラマではなく、不貞する男女一般の図解に映画が変調するかのようだ。作中で二人はお互いをほとんど名前で呼ばないのだけど、それもおそらく不倫された男女の喪失感をめぐる平凡な欲望に焦点を合わせるためだろう。不貞というありふれたテーマをどんなふうに扱うのかと思ったらそれこそ裏切られて、張り詰める男女の緊張感の不気味さにやられてしまった。
 着替えで場面転換する手法は劇作家としてのキリル・セレブレンニコフの好みだろうか、意表をつかれるしワンショットで仕掛けられるあたり映画的な技だと思う。ぐるりと人物のまわりを旋回するカメラの動きも特徴的で、見ている観客の視線があっちこっち右往左往するので特定の誰かに感情移入せずに済む。
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