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彼女が好きなものはのfernのレビュー・感想・評価

彼女が好きなものは(2021年製作の映画)
4.8
NHKのドラマで〈腐女子うっかりゲイに告る〉がとても良かったので
映画上映があると知って製作者やキャストが違ったらどうなるのか、と楽しみにしていました。

テレビでは主役の純は、金子大地くんでした。
金子大地くんの純もよかったんですが、神尾楓珠くんの純もとてもよかったです。

キャストが全員上手かった。

紗枝役の山田杏奈ちゃんも普通の女子高校生っぽくて初々しく、そして肝っ玉が据わっていました。

ゲイであることを隠しながら生きてる純くん
見てるだけで辛い
母親にも親友の亮平にも言えない

純には妻帯者の恋人もいるけど、
将来アパートで孤独死している自分しか想像できないくらいの孤独が、常に彼に付きまとっている。

普通に結婚して子供だって作りたい、お母さんに孫だって抱かせてあげたい
普通であることを切に求めている純が、紗枝ちゃんからの告白を受け入れるのも致し方ないことな気もする。

ゲイであることを隠して生きるほども辛くはないけれど
誰だって何かしら隠しながら時に孤独を感じて生きているのではないかしら?
そう言う心を抱えている人にこの映画はすごく刺さる。
そして、慰められる。

見ている間中、私の心にはしとしとと雨が降り、ベタな慰めをするお母さんに純が苦しみと葛藤から切れてしまう場面では涙腺が崩壊しました。
「私だってね、高校生のころ、年上の同性の先輩を好きになったことあるのよ、これが恋かしら、なんてね。」
「違うよ、そんなんじゃない、そう言うことじゃないんだ、なぜ僕なんか産んだんだよ、どうしてどうして」

結局は、紗枝は騙されたような形になるのだけれど、
事実を知り、苦しみながらも純に寄り添い理解したいと努力する姿に心打たれました。

今では少しづつ世間でLGBTの問題も理解されつつあるようですが
実際、自分の家族や周りにLGBTの人がいたら
クラスメイト達がそうだったようにそう簡単には受け入れられないかもしれない、と思う自分もいます。

摩擦がなければ前に進めない。

ラスト、純が大阪に行ってしまう前に初デートする二人
大きな気持ちでお互いを受け入れてその存在自体を好きだと、言い合う場面がとてもよかった。
希望が感じられるラストシーンが最高だった。

洋画を見る方が多いけれど
今回は、理解できる言語がすぐに耳にはいってくるのっていいな、と思いました。
そして映画館
TVのドラマより良かったとしたら、それは映画館で観たから
映画館で映画を観る素晴らしさを改めて感じました。

(昔お兄ちゃんと漫才をしていた前田旺志郎君が出ていてびっくり
役者さんになったんですね)
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