ベティー

ノーカントリーのベティーのレビュー・感想・評価

ノーカントリー(2007年製作の映画)
4.0
酸素ボンベの新しい活用法。何を考えているのかわからない人間が一番恐ろしい。斬新な殺しの手法、目力、髪型がすばらしい殺し屋アントン・シガーの不気味さを楽しむという一点物映画で、わけのわからない行動規範と不安感がじわじわ怖い。
ストーリーは単純で、とある麻薬取引で殺し合いになり現場に放置された金を見つけた男と、その男を追跡する殺し屋のことの顛末を描いています。
暗めの雰囲気とさりげなく裏をいく場面の流れが結構好き。基本的に新種の殺し屋の恐怖を味わう感なので、そこを外すと致命的につまらない駄作に感じる可能性大か。アクション性もなく、特にストーリーに深みもなく、人物に面白い人もあんまりでてこないし、かなり偏った映画ですね。
ただ世間話をしただけなのにわけのわからない因縁をつけられるかわいそうな店員のところが特にいい。意味不明な空気感には素晴らしい演出センスを感じますね。初対面の客とうっかり世間話してみたら、なんか話がおかしいことになってしまっているな、、なにこいつやばい、、という雰囲気がすごくリアルで気持ち悪いです。
この殺し屋なぜかコインに絡むと意味深な台詞をはくところとかキャラクターいいですね。
しかし、この男の独自の行動規範というのがなかなかわかりずらい。冒頭でトミー・リー演じる警察官が、ある殺人犯少年の話を例で挙げているところがよけいに話を見えづらくしているきがするのですが、殺し屋アントン・シガーはそういったいわゆるシリアルキラーとかサイコパスという類のタイプに感じないんですよね。怪我の治療法などのシーンから見ても、どちらかというとプロの殺し屋といったジャンルで、自分の仕事への忠実さやこだわりを感じるしなあ。それとも、もともとサイコパスだったけど自分にあった天職を見つけて職人気質が芽生えたのかな?そういう、やってるうちにこの仕事に誇りを感じて、みたいな話でとらえると分かる気もしてきます。
しかしこの殺し屋には、職人気質以外にも、どことなく人間の行動を試しているような感じをうけますね。わけのわからない自分に対峙した時の人間がどういった行動をとるのか、どんな表情をするのかをあの無表情の裏で実は楽しんでいるのかもしれないな。
ベティー

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