能年玲奈という女優が「のん」という創作あーちすとという生き方をする中で、映画というフィールドで何が出来るのか。
前作に当たる「おちをつけなんせ」では「のん」のパブリックイメージがそのまま映像化されていたように思う。しかし驚くのは、かなりの部分を自身が手がけていた点だ。有無を言わせぬ多彩さに驚嘆するしかなかった。
そして今作。コロナ禍における美大生の苦悩を出発点としながら、人間関係の距離感を再確認する時間になっている。それは初めて緊急事態宣言が発令されたあの瞬間にしかなかった感覚だ。もう3年が経ち、空振りに終わる対策に誰もがあの感覚を忘れてしまった。
そんな中で、どうしようもない「挫折の強制」「敗北の強要」という事実に反旗を翻した。
どうしようもない事への強烈な反抗、手段は必ずしも適切ではない青さ。これこそアーティストがやらねばならないものだ。
メディアは「旬」な話題でなければ、人々の関心が集まらなければ取り上げることはない。歴史の裏で泣き寝入りするしかなかったものに光を当てる。利害だけでふるいにかけてはならない「事実」を捉えたジャーナリズム的であり、純度120%の「濃密な生の叫び」が込められた1作。
「創作あーちすと"のん"」今後益々、力を発揮していくのは間違いない。
レビュー動画
https://youtu.be/aS4NXzqvU-A