斉藤百香

コーダ あいのうたの斉藤百香のレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.7
第94回アカデミー賞で三部門受賞した作品

★あらすじ
田舎街に住む主人公・高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聞こえる。
家族のためルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。

新学期、歌が好きなルビーは合唱クラブを選択。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。

だが、ルビー両親は大反対
なぜなら歌声が聴こえないから娘の才能を信じられないんですね〜

家族には通訳が必要ですし、家業の方が大切だからと

悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが…

ルビーの、家族の選択。



タイトルにもあるCodaという単語は、”Child of Deaf Adults“の略語で、「ろうの親を持つ子供」「耳が聞こえない親を持つ子供」という意味で、まさにルビーのこと!


【⚠️以下少しネタバレ含む】


★愛とは、理解しようとする気持ちである

この物語は生まれながらにして聞こえない家族の中に聴こえる人として生まれたルビーが、
家族の一員、としてではなく
ルビー自身としての人生を歩み始める物語。


耳の聞こえない世界は、私たちが考えてる以上に細かい苦労があるものです。

そんな大変な世界の中で、
家族を助ける存在としての役割を持つルビーがいる
それを当たり前だと思っている、ルビーと家族なのだ。

そんな中で彼女見つけた 音楽 と言う道。

家族は耳が聴こえないので、
音楽を知らない。
唯一の楽しみ方といえば振動を感じるくらい。
そりゃ、娘の音大行きも反対するよねー
音楽の楽しさや胸を打つ感動を知らないから。

見てるこっちとしては、ルビーの歌は素晴らしいってみんな言ってるから信じてよー!ってもどかしく感じるんですけど、

ルビーたち合唱部の発表会シーンで、完全に無音になるシーンがあって
そこで、あ、これが音のない世界か、とハッとさせられました。
ステージでただ人が口を動かしてるの
そりゃ分からないよね退屈よね。

聞こえない
と言うことは、どう言うことなのか?

なんとなく理解してるつもりでも
全くろうの方の感じ方をわかってなかったなって
改めて思わされます。


家に音がない世界で音楽を愛する様になるルビーは、自分の道を自分で見つけ切り拓いてる感じがしてかっこいいし
いつまでも家族に囚われてはいけないと、背中を押す兄の姿もかっこいいし

最終的に音楽と言うものをその人なりに理解し、応援する決断をした両親もかっこいい。



また、作中でお母さんが言った言葉が印象的。
『貴女が生まれた時、聾者であってくれと願った
聴こえる人とは心から分かり合えない気がしたの』

家族だとしても分からない。
でも、その本質的には分かり合えない世界の中で
相手を理解しようとする気持ち

それが愛なのではないでしょうか…
斉藤百香

斉藤百香