やっぱりカルカン

コーダ あいのうたのやっぱりカルカンのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
3.6
金曜ロードショー、地上波初放送、PG12(111分)2015年のフランス映画『エール!』のハリウッド版リメイクで、フランス版は未視聴。本作は初見。

Twitterでは「結構カットされてる」との意見もあったが放送枠も114分なのでエンドロールを除けば本編はそんなにカットされてないような気がする。
なおPG12は序盤に「葉っぱ吸って(略)」というセリフ(冗談で言っただけで本当に吸うシーンはない)があり、薬物関係でこのレーティングになったらしい。他にもFワード、セックス、コンドーム、性行為中の喘ぎ声と、それをモノマネしてふざけるシーンなど複数の下ネタがあるのでお子様との視聴にはご注意を。

タイトルのCODAとは、Child of Deaf Adultsの略で“ろう者の親を持つ子供”という意味。またコーダは楽曲の終わりを指す音楽記号としても用いられ、ひとつの章が終わり、また次の章が始まることを象徴しているらしい。
ろう者の家族役は皆さん本当にろう者の俳優さんで、そうなると主演のルビー役、イギリス人のエミリア・ジョーンズさんはどうなんだろう?昔から手話ができたのかな?もしかして本当にCODAなの?と思って検索してみたら、なんとオーディションに受かってから歌とアメリカ手話の特訓を開始したそうだ。
当時ルビーと同じ17歳だったエミリアさんの演技と歌と手話、どれも素晴らしかった。撮影中、監督や他のキャスト達とご飯に行った時、まるで映画のように家族役の3人に手話で通訳をしていたぐらい、完璧に自分のものにしていたとの事。きっとたくさん努力したんだと思う。お若いのにすごすぎる。

たくさんの賞を取ったので、そんなに素晴らしい映画なのかと楽しみにしていたけど正直自分にはそこまで刺さらなかった。
…と言いつつも「なんとなくわかったぞ。もしかしたら最後まで泣かないで終わるかもな」と思っていた矢先、途中で音がなくなって静かになる30秒からその後の展開が急にグッときて、お父さんとトラックの荷台に座った所からは涙がボロボロ出てきた。
父と娘ってなんか特別な気がする。
この映画でもやっぱりキーマンは父だった。
今思い返せば序盤、毒親の話なのかと思って見てたら途中から全然いい家族になっててちょっとびっくりした。

音楽がテーマの映画と聞いていた割には、最初は控えめな劇伴が使用されており、ストーリーの進行に合わせてだんだんポップ・ロックなど多様な音楽になっていく構成が効果的だったと思う。歌唱する楽曲の歌詞が主人公の気持ちとリンクしているのもよかった。

私も家族に子供時代をめちゃくちゃにされたクチなので途中心が痛むシーンもあったけどラストは明るい終わり方で、見終わったあとはあんまり嫌な気分にならなかった。
ルビーは自分の子供時代と比較して幸せな17歳だと思うので、見てると少し自分が惨めな人間に感じた。

ただ自分に合わなかっただけで、映画自体はとてもよかったと思う。またテレビでやってたら見るかもしれないが、個人的にはすすんで何回も見たいと思えるほどではなかった。
予告やCMでオチの映像が結構使われてたから最初から話の展開が読めてたせいでもあるかな…
もしかしたら何度か見た方が良さが分かるのかもしれない。機会があったら次はぜひノーカットで見たいと思う。