Martha

劇場版 呪術廻戦 0のMarthaのネタバレレビュー・内容・結末

劇場版 呪術廻戦 0(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

愛は最も歪んだ呪いと言い放った現代最強の呪術師と、狂えないまま地獄の道を選んだ最強の呪術師だった最悪の呪詛師の関係性の湿度と粘度と温度が高すぎて、回想の入れ方とか声の演技が凄すぎてなんかもう虚無。夏油様が心の底から笑えない世界なんて滅びちまえよって感じ。
何回も観た上で一番有難かったのは、0巻だけを見れば狂人のようなヒール役である夏油傑の過去を少しでも描いてくれた所。ミミナナを助けたところや、五条に善悪を説いたところ、2人の青春と別れを匂わせてくれた所に感謝。夏油傑という少年があの日選んだ選択の裏にある痛みや傷が彼の免罪符になる訳じゃないけど、非術師にたくさん奪われて消費されてきたのも事実で、庇護される立場であったはずの少年が腐った呪術界で、精神をすり減らされてきたのも事実で。だからって彼の全ての行いが赦される訳じゃないけど彼の傷も推して測るべきだと個人的には思っていたから映画での夏油傑の描かれ方や声優さんの演じ方は大満足で解釈一致でした。
そして怨霊里香ちゃんがそれはもう可愛かった。漫画で思ってたよりもずっと可愛かった。




以下猿の感想殴り書き。
原作本誌ネタバレあり。


夏油様
・アッパー系教祖を演じてる時とふと素が出た瞬間(回想シーンとか夕焼けを見つめてるシーン、最期の悟とのシーン)の演じ分けが素晴らしくて声優さんの演技の解釈が素晴らしい。
・真奈美さんが猿の血を踏むのを嫌ったのに反して、夏油様は真希さんの血が自分につくことを厭わなかったところとか、私の世界にお前はいらないといいつつトドメを刺さずに治療する乙骨を邪魔しなかったりとか、猿は嫌いと自分に言い聞かせつつも嫌いきれずに人間を慈しんでいた過去の自分を殺せていないところが大変解釈一致で大好き
・回想シーン全部大好き過ぎてずっと泣いてた。悟に道徳を説いてる時の優しい声、ミミナナに向けた優しい目線、新宿で悟と別れた時の沈んだ声、全部最高。
・所々で垣間見える最強の呪術師として五条悟と肩を並べていた実力がすげえ。動きにくい袈裟で、粒ぞろいと言われている真希パンダ棘を相手にしてからの呪力の塊である乙骨と呪いの女王を相手にしてたの凄くない?そもそもこいつらと戦いながら呪霊2000体を家族の護衛に回してるわけじゃん?芥見先生が家族の護衛に呪霊を散らさなければ乙骨に勝てたと言っていたところがグサリと刺さった。
・"女誑しが。"頂きました。最高。思ってたより声高かったね。作中一の公式モテ男が何言ってんだよてめえって感じだけどいい声なので許す。
・非術師の負の感情の煮こごりで、仲間を屠っていくゲロ雑巾味の呪霊を6000体以上飲み込んだという事実がほんとに辛い。戦闘で失った呪霊もいただろうし、学生時代の呪霊は甚爾戦でも結構使っちゃっただろうから離反後に大義の為を思って己を殺して祓って祓って取り込んで、って頑張ってたんだろうね。子育てしながら教祖やって呪霊も集めてってそりゃアッパー系演じてないと気が狂うわ。美味しい物食べて幸せに生きてよ。
・最期のシーンがあまりにも美してくて涙止まらなかった。乙骨戦で痛手をおってもへこたれてなかったのに、悟を見た瞬間諦めて家族の安否だけ確認して高校時代に戻ったみたいなまっさらな笑顔を見せて逝ってしまったのが悲しいけど嬉しい。闇堕ちした訳では無いし、自分で望んで選んだ道を責任を持って突き進んできて、可哀想だとは言えないしそういうのは失礼になってしまうけど、苦しいことが多かった人生を親友の手で笑って終わらせられたのは良かったね。

五条
・相変わらず顔が良い。基本軽薄だけど傑が関わると急に真摯になるのクソデカ感情がわかりやすくて良い。適当な人間を演じてる部分も本当に冷たい部分もあるんだろうけど、若者を守ろうという意志と自分の強者としての優位性を有意義に使おうとしている所に誰かさんから叩き込まれた善悪の指針を感じた。
・教室で夕焼けを見て物思いに耽るシーンとか、傑の最期のシーンとかが凄く切なくて良い顔をしていた。五条悟も人間なんだなって感じ。
・戦闘シーンはやっぱり人外。傑が学生を殺さないことを見越して乙骨の起爆剤として死地に生徒を送り込んじゃうところはやはり"五条悟"だな。最強としての器量も冷静さも残酷さも持ってる。
・十年前、引き止めることも殺すことも出来なかった相手を今度こそ屠らなくてはいけない悟の心情が辛くて涙出た。
・"愛は最も歪んだ呪い""呪術師は死ぬ時は一人"と言い放った悟が、去っていく親友を呪ってしまわないように慎重に言葉を選んで、それでも一人で逝かせないように目線を合わせて笑わせてあげてちゃんと向き合ってとどめを刺したのが精一杯の優しさって感じでもうダメだった。色んな愛の形があるけど悟が学生時代から引き摺ってるこの大きすぎる湿った感情も確かに愛なんだろうと思った。

夏油ファミリー
・ミミナナが滅茶苦茶可愛かった。あの傷ついた子供たちが健やかなギャルに成長してて自己肯定感激高でワガママも言える子達になってて夏油様は良いパパだったんだろうね。伊地知さんはミミナナはまだ15なんて子供で善悪の判断もつかないだろうって言ったけど、"あの方が白と言えば黒いものも白いんだよ"って台詞から、善悪(白黒)の判断はとっくに自分たちで出来るようになっているけどそれでも尚、救い主の夏油様がそう言うならそれだけが自分たちにとっての真実ってことなんだろうね。17歳だった少年が虐げられていた子供たちをどんな気持ちで救い出して育て上げたのか、あの二人にとって夏油様がどれだけ大きな存在だったのかが分かるからこそ、本誌での"大好き大好き"のくだりがあまりにも分かりすぎてその後の展開や結末を思うと胃に穴が開きそう。
・ミゲルメチャ強なのはファンブックとかで聞いてたけどこうしてみるとすげえな。五条悟を足止めさせられるって相当の手練だし最早特級レベルでは?って感じ。なんだかんだ悪態つきつつも、夏油様の時間稼ぎのために貴重な呪具である黒縄も使って命懸けで"最強"と戦っていたあたり、あまり全面に出さずとも夏油様に心酔してたんだろうことは分かった。今後の活躍も期待してる。

硝子
出番はそんなに大くないものの、会議の中座だったり、百鬼夜行の時の救急スペースだったりで五条夏油との関係性の深さがちゃんと描かれてたのが良かった。不器用な同級生が選んだ道を馬鹿だなめんどくせえな、と思いつつ決して否定はしてないし、何なら彼をそうさせてしまったことに責任を感じてすら居そうな感じが良い。さしすよ健やかに幸せであってくれ!!

真希さん
回想シーンも挿入されつつ、真っ直ぐで直向きな強い花として描かれていたのが良かった。乙骨が憧れたどこまでも強い彼女の心根が眩しくも懐かしいし、本誌の展開を知っているうえで一年時の真希さんを見るのはあまりにも心労が凄い。あと顔が滅茶苦茶可愛かったです。禪院家の遺伝子に乾杯。禪院は基本みんな顔が良い。

乙骨&里香ちゃん
乙骨パイセンは出だしであれ?シンジくん??ってなったけど徐々に乙骨憂太にしか見えなくなっていたのが流石緒方様。そして伝説のプロポーズシーンですがマジで女誑し過ぎて夏油様と共に心の中で"女誑しめ!"って言ってしまった。1番好きなセリフは"蝶よりも花よりも丁重に扱え"です。緒方様の声でその言葉を紡いでくださってありがとう。夏油戦の時も、正義の味方面せずに"貴方が正しいかなんてわからないけど友達を傷つけるやつは殺す"という特大のエゴを振り回して戦ってくれるサイコパスっぷりが良かった。乙骨はぶっとんでるあたり呪術師向いてるからこのまま突き進んで欲しい。里香ちゃんは怨霊でもそうじゃなくてもずっと可愛かった。"憂太あいつ嫌い?じゃあリカも嫌い!"とか、怒られて"怒らないで嫌いにならないで"とか、ひたすら健気で可愛い。解呪のシーンもとても美しくて、乙骨と里香ちゃんの純愛が大好きだからこそ、本誌で先輩が連れ歩いてる"リカちゃん"を見るとその女誰よお!!ってなる。お前らの純愛はどこに行った。


二回目鑑賞後追記

・やっぱり残り香を嗅いでいる五条のシーンは笑ってしまった。ご立派な六眼が付いてるんだから嗅ぐな。
・2回目だから少し冷静に観れた分、表情の機敏が丁寧に描かれているのに気づけてよかった。虐待されている双子を見つけた瞬間の驚愕と絶望の表情が辛い。"弱きを助け強きを挫く"を理念に利他的にその身を粉にしてきた優しい青年が、守ってきた弱者にその真っ直ぐな心を叩き折られた瞬間がぐろい。その後のミミナナに手を差し伸べた際の慈愛の微笑みもセットで、メンタルに突き刺さった。"愚者に死を。弱者に罰を。強者に愛を。"を掲げる教祖よりも、結局は虐げられて屠られていく同胞を見過ごせなくて、理想と現実の狭間で押しつぶされそうだった17歳の少年が本当の夏油傑なんだろうって感じ。
・宣戦布告よりも菜々子のワガママを優先させるパパ夏油様素晴らしい。"自分は非術師となるべく関わりたくないけど、家族には強要しないし本人たちの意志を尊重している"というファンブック情報と完璧に一致で頭抱えた。
・宣戦布告後の夕暮れに、完全にすれ違ってしまった道の先で同じ夕暮れを見ながら同じ想い出に浸って互いのことを考えている五条と夏油様まじでなんなの。過去の教室で、傑の机に向かい合うように移動された悟の椅子だったり、会いに来た傑を攻撃出来ずに力なく解かれる手印だったり、映画オリジナルの追加シーンが秀逸。
・百鬼夜行の時に伊地知や七海(最強の片割れが陰っていったのをリアルタイムで観ていた高専の後輩たち)が、大人としての責務を果たしていたのがとても良い。伊地知は15歳のミミナナにまだ子供で善悪の判断もつかないだろうと言ってくれたけど、かつて15歳の夏油少年を善悪の指針としていた五条少年との関係の歪さや、彼らの危うさを指摘して導いてあげることが出来なかった大人たちが伊地知や七海みたいだったら良いのに。あの時、16や17の子供たちを強いからと使い潰さなければ、大人達がもっと学生を、子供を守ってあげられてたら灰原は死ななかったかもしれないし、夏油様の心は折れなかったかもしれないし極端な選択はしなかったかもしれない。かもしれないを考えたらキリがないけど、あの時守れなかった青春を重ねて五条や七海、伊地知が大人として前に出ているのが切なくも嬉しい。補助監督を大勢殺していて、確実に術式や呪力で圧倒してきているミミナナに丸腰でも正論で説教できる伊地知はとってもかっこいいし、黒閃連発ナナミンも最高。
・1回目見た時は気のせいかなって感じだったけど余裕もって見返してみても、百鬼夜行中の呪霊たちはみんな夏油様の家族たちを守るように動いていて、2000体の呪霊を操作しながら乙骨と里香ちゃんの相手してた夏油様おっそろしいな、と。高専側が見込んでたのは呪詛師50人程度と、呪霊はもしかしたら2000くらいは持ってるかも、って程度だったけど、実際は6人の呪詛師と6000体超の呪霊で立ち向かってきたの、自分の努力に全フリして家族たちに退路を残してたあたりが夏油傑たる所以なんだろうな。ご丁寧に宣戦布告して準備期間を与えた上に若い術師は殺さないし治療の間は休戦するし、仲間に犠牲が出ないように加減して、五条の自分への私情を利用することも出来たのにそれもしなくて、そういう夏油傑の人間らしさを全て捨て去った他人が彼のポテンシャルを存分に生かした結果が渋谷事変なわけで、呆気なく最強は封印できてしまったし東京は壊滅して多くの優秀な術師が死んで、日本はさながら地獄絵図な結末を知っているからこそ"夏油傑"本人の優しさとか詰めの甘さが身に染みる。
・小説で言葉も仕草も悪い癖さえもすべてが懐かしくて夏油を呪ってしまいそうだった、って書かれているのを読んでから2回目を観たから、最後のシーンは五条の心情があまりにも辛くて涙が止まらん。最強の男が、どんな顔をしたらいいか分からないほどに揺らぐ相手が3年にも満たないわずかな時間で彼に沢山のことを教えてくれた親友だけで、その親友を自分が殺さなくてはいけないなんて、度し難い悲哀だ。人外の戦い方をミゲル戦で見せつけた直後に、人間らしい悲哀に苛まれる五条悟の振り幅がえぐい。子供との接し方や上層部とのかけひきで、この後に及んで傑の教えを守って彼の口調や態度を真似ているのも健気だし、普段飄々として軽薄で、何にも揺らがない五条が、親友相手にここまでガタガタに揺らいでるのが可愛らしくもあり哀れでもある。
・何度観ても夏油様死なないで、ってなるしどうしてこんなに優しい人が死なないといけないんだって気持ちと、この人にこの世界は生きづらいから、来世は心の底から笑える世界で幸せになってくれという気持ちが戦ってしまう。五条が夏油様に"正しい死"を齎してくれたのは喜ぶべきことだったし、ノベライズではっきりと夏油様自信が五条に殺されることを歓迎していたことが分かったけど、この五条の感傷から夏油様のご遺体がこのあと蹂躙されることを思うと渋い顔になってしまう。

5回目(4DX)追記
今回初4DXだったけどもう二度とチャレンジしないことを決めた。くっそ揺れる。酔う。酔いすぎて話に集中出来ない。でも良かったとこもいっぱいあるから取り敢えず覚え書き。

・兎にも角にも夏油様がめっっっちゃいい匂いする。これでもかってくらいいい匂いする。この匂い嫌いな人いるの?戦闘シーンで袈裟や髪の毛をたなびかせる度にフワって甘い匂いが漂ってきて尊死するかと思った。動きで酔ってんのに一生懸命匂い嗅いでたら過換気で余計気持ち悪くなった。

・五条に投げられるナイフ、狗巻くんのノドナオール、愚かな猿になれる。金森さんと一緒にちゅーちゅーされたしぐるぐる回る猿のシーンで座席もぐるぐるした。私たちはみな等しく猿。

・ほぼ全キャラクターにしばき回される。リカちゃんの大大大好きだよ〜の興奮が一番揺れた。落ち着け。夏油様の攻撃もだいぶ痛かったし悟のミゲル戦もかなり揺れたけどリカちゃん程じゃなかった気がする。というかいい匂いすぎてちょっと正気を失ってた。普通にむち打ちになるし事前にロッカーに荷物詰める意図を理解した。

・呪霊の血をめちゃくちゃ浴びる。人間の血は降ってこなかったけど、呪霊が爆ぜる度にびちゃびちゃ降ってくる。

・夏油様の手に吸い込まれる呪霊玉になれる。猿的にはこれ以上ない幸。

・悟が夏油様に放った最期の茈がそれはもう静かで優しかった。純愛のBGMをバックに響いた静かな衝撃に涙が出た。その前の戦闘シーンで悟の戦闘力とか術式の出力のデカさを存分に発揮したあとの、あの優しい茈は反則。あの日新宿で弾けなかった指で、正しい死を大切な人に齎してあげるためだけの優しい優しい引導だった。

・4DXは全く関係ないけど観ればみるほど夏油様の容姿が整ってる。鼻先が若干アップノーズ気味でまつ毛も実は長いからEラインがくっそ綺麗。横顔美人。一重で目が細いから一般的なイケメンではないけど、彫りも深くてフェイスラインもシャープでこんな17歳の少年が教祖やってたらそりゃ信者も増えるわな。ミミナナちゃんの夏油様への崇拝っぷりも回を重ねる事に声色とかも読み取れてああめちゃくちゃ好きなんだな、って伝わってきてしんどい。観る度に色んなことを考えながら観てきたけど、乙骨が"貴方の言っていることが正しいか間違ってるかは分からないけど僕の大切な人のためにお前を殺す"ってスタンスがすごく好き。あの人を悪だと決めつける人がいないのが救い。作戦会議で中座する硝子さんとか、悟の前では"傑"って呼んでる学長も、あの人の過去や柔らかさを知っている人達が悼んでいるのが分かるからそこは救いだなって。
Martha

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