冒頭のトラックを使ったアクションは面白いのだが、出てくる人間がことごとくおかしな言葉遣いによる変な演技ばかりするので、全く感情移入できない。「エヴァ」でもそうだったが、結局庵野監督は現実世界に生きているリアルな人間のドラマを描くことなど全くできず、設定表から飛び出てきたようなキャラクターの運動しか描くことができないのだなと、手数の少なさを感じた。こういう芸風の監督がなぜ実写にこだわるのかよく判らない。アニメのようなフィクショナルなメディアでないと、こんなキャラクターは成立しないだろう。
群像劇かつひとつひとつの人間ドラマはほとんど描かれない『シン・ゴジラ』にはこの作劇がハマったわけだが、本作はライダーとなった男の哀しみなどの人間の内面を描く作品で、そこでも同じアプローチをやっているのだから失敗するに決まっている。用意されているストーリー・企画に対して全く対応できていないので、『シン・ゴジラ』もたまたまハマったフロックだっただけなのだろう。
あとはこんなことをつらつら書くのも野暮なほど、単純に面白くない。『大日本人』なみのチープさだった。
