割と失敗しがちな今風のリアルな会話劇、今作は間の取り方や時事ネタのチョイスも含めてギリギリのラインで上手くいっている感じがします。
ストーリー自体に特に意味らしきものはなくダラダラと流れるこの日常のやりとりこそがメインになる要素のひとつで、その中に差し込まれる殺し屋稼業のバイオレンスとキレキレのアクションが全体の空気をギュッと絞め直してまたゆる～く弛緩していく、この妙なリズム感を楽しむ作品かなと。
序盤の妄想オチや時系列巻き戻し展開にあまり意味を感じられず不思議な気持ちになりましたが、ここでメイン2人のキャラクター説明をしているという事なんでしょうか。
体を張ったバトルシーンは邦画の中でも飛び抜けたきらめきを放っているだけにもう少しここの配分が多ければと感じてしまいますが、2人のへろへろな日常もずっと見ていたいと思わせる魅力たっぷりな所が悩ましい。
その日常の根底に、どこか現代の若者が直面するシビアな実情を思わせる描写が入れ込んであるのも絶妙なバランス感覚で地味に効いている気がします。
まひろ役、伊澤彩織さんのアクションはさすが本職というスピード感と画面映えするハッタリに溢れていて、すっかり心奪われてしまいました。
一方まるでアニメの様にパタパタと表情を変え続けるちさと役の高石あかりさんも、実は今作全体のノリを決定づけているのはこの人なのではと感じさせる好演。
お二人とも今後の活躍が楽しみです。
