パンダコパンダ

かばのパンダコパンダのレビュー・感想・評価

かば(2021年製作の映画)
4.8
【ストーリーやセリフなどのネタバレはありませんが、映画の印象、イメージなどは語っていますので、未見の方で前知識を入れたくない方は読まない方が無難です】

前から観たいと思っていた映画だったので初日初回の舞台挨拶回に行って来ました。

観る前は大阪版金八先生のような映画なのかなと(タイトルが先生の名前の『かば』なので)勝手に思っていましたが、良い意味で見事に期待を裏切られました。
“一熱血教師の映画”では全くありません。もちろんかば先生は世間一般からすると熱血教師であることは間違いないのですが、その部分をゴリ押ししていません。
生徒と向き合い、対話する。授業のシーンはありますが、知識を教えるシーンはありません。人間対人間、心と心の通い合い。信頼。人間・かば先生の思いやりや優しさがひしひしと伝わってきます。

かば先生だけではありません。ある女生徒に寄り添うのは新米の女性教師です。
女生徒役のさくら若菜さんは演じた当時役と同じ中学3年だったそうですが、時代が全く違うし、役柄の境遇を想像するのも難しかったと思います。が、本当によく理解して完璧に演じられていたと思います。個人的には“アカデミー助演女優賞”にノミネートしたい気持ちです。

監督の中にどこまで意識下にあったかは分かりませんが、『かば』を観ていて『じゃりン子チエ』が思い出されました。
設定の時代や地域が近いからだけではなく、人情や優しさに共通するものがある。チエの声を演じられていた中山千夏さんが出演されているのも偶然ではないと思います。

この映画が完成に至る道のりは全く平坦ではなかったそうです。が、監督と俳優陣の熱量、モデルになった方々や関係者の思いが共鳴し、見事に実を結んでできた映画だというのが分かります。
一般公開の映画館で観終わって拍手が起こることは殆どないと思いますが、この映画ではそれが起こりましたし、心から拍手したいと思う映画です。