Harutaco

東京オリンピック2017 都営霞ケ丘アパートのHarutacoのレビュー・感想・評価

4.0
誰にとっても、なんらかの形でオリンピックは日常生活に入り込んできたと思う。彼らにとってそれは立ち退きだった。それを映したドキュメンタリー。公式オリンピック映画の公開に合わせて再上映しているらしい。

立ち退きに反対しながらも受け入れざるをえず、でも笑顔も見せながら引っ越し作業をすすめる住民たち。彼らの生活と思考と感情が、淡々と、しかし濃密に映し出されている。

時折挿入されるシンプルなギターの響き以外、音楽も説明的な語りもない。監督のメッセージはほぼ、語りや情景の切り取り方や繋ぎ合わせかた、カメラのアングル、もともと入っている環境音のみで伝えられている。

静かに、いろいろ考えさせられながら観ることができ、過ぎ去ったオリンピックを見つめ直すのに、とても良い映画でした。行ってみたかったシモキタ・エキマエ・シネマK2にも行けてよかった。

この映画についての監督と音楽担当の大友良英さんの対談記事では、ドキュメンタリーという手法がはらむ暴力性を認識しつつそれに向き合う、という話があって、映画を通してそれを感じることもできた。

ただ、上映後のトーク(ユーチューバーの方らしい)が本当に残念でした。主に、公式オリンピック映画を中傷することで場を盛り上げるというような内容で、映画の描写の丁寧さ、誠実さを台無しにしてしまったように感じました。
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