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裁かるゝジャンヌのGONのレビュー・感想・評価

裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)
4.3
今から100年近く前に映画という芸術は完成されていた ── カール・テオドア・ドライヤーの手によって!

この映画は観る者に対して瞬きをすることを断じて許さない。一瞬たりとも。あるとすれば、中間字幕が流れるシーンのみ…か。
ブレッソンの省略による美とはまた別の次元の、磨きあげられた芸術。省略ではなく、磨きあげられた美しさ。ジャンヌの顔につく涙や虫でさえ芸術的。

この映画は圧倒的なクローズアップ技法ばかりが注目されてクローズアップこそがこの映画のすべて!だと思われがちだけど、本当の本当、ガチのマジで凄いのはそこじゃなく(クローズアップも実際とんでもなくヤバい)、ラストのジャンヌが火刑によって亡くなる一連のシーン。
立ち込める煙と共にグレインが酷くなり、画面全体がかなり見づらくなるんだけど、逆にそのグレインがあまりに非現実的な事実を突きつけてくる謎の効果を発揮する。そう、謎の効果。僕の語彙力じゃ言い表せられない謎の何かだ!
見づらい画面の中で死にゆくジャンヌと兵士により殺されてゆく市民。そこに流れる大音量の神々しいパイプオルガンの音に恐怖を覚える。
正直な話、本編のほとんどのシーンは音楽のない、完全な無音状態の方が緊迫感が出そうなのだけれど、OPとラストシーン、そしてエンドロールは音楽なしでは語れないほど、その音楽にはエネルギーがあった。

100年近く前に作られたにも関わらず、今なお前衛的で洗練されまくった超傑作。ただ、欲を言えばこれを劇場のスクリーンで観たかった…
どんなデッカイテレビやディスプレイでも、どんなに良いヘッドフォンを付けても劇場のあの設備と雰囲気は作り出せない。どうにか出来ないのか。どっかで上映してくれないのか!ああっ!せめてホームシアターがあれば!
こういう劇場のスクリーンでこそ真価を発揮する作品のことを”映画”って言うんだろうな〜
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