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スパゲティコード・ラブのりのネタバレレビュー・内容・結末

スパゲティコード・ラブ(2021年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

全員が私で、これは私の話だった。
何者かになりたいのは私だけじゃなくて、誰かだけじゃない。でもそれってやっぱり、私は特別じゃないんだってことで。
特別じゃないみんながもがいて、足掻いて、生きている街・東京。
東京出身だからかこの土地になにか強い憧れだったり、劣等感だったりを感じたことはないけれど、この映画を占めている感情はいま私が抱いている感情そのものだ、とおもった。
深かったり浅かったりその交わり方は様々であるけれど、複雑に交錯していく人間関係。淡々と日常を描いていく画面に、それぞれの心情の語りを中心に進められていく物語。音楽とそれぞれのセリフ、感情のリンクが印象的。リアルな現代の私たちの姿だと感じた。
清水尋也目当てでの鑑賞だったが、終わる頃には全員に感情移入していた。普段なら清水尋也と絡んでいる女というだけで相手役の女優を妬ましくおもってしまうが(ストーリーを追う上ではきちんと割り切れるけどそれとこれとは別!)、三浦透子演じる心にも自己投影してしまったせいか純粋にストーリーをたのしめたようにおもう。
この手の映画は「こんな作品をつくった/観た自分」というように"陶酔感"だけで終わってしまうものが多いが、本作は観てよかった、とおもえる映画だった。
"全員の夢が叶いました。願いが叶いました。はい、ハッピーエンドです。全て解決です。"というわかりやすいスカッと感がある訳ではないのに、エンドロールを観ながらどこかすっきりしている自分がいた。上映終了までに観に行けてよかった。渋谷でのシーンが多い分、おなじ渋谷という場所で観れたことで私もあの中の一員のようにおもえた。


〈スパゲティコードとは、プログラムのソースコードがそれを制作したプログラマ以外にとって解読困難である事〉


〈スパゲティコードとは、コンピュータプログラムの状態を表す俗語の一つ。命令の実行順が複雑に入り組んでいたり、

遠く離れた関連性の薄そうなコード間で共通の変数

が使われるなど、処理の流れや構造が把握しにくい見通しの悪い状態になっているプログラムのこと。〉


追記
・ど頭で「満島ひかりだ…!」した。良。
・黒須凛、思い浮かぶ人物の解像度がだいぶ高いけどもこれは大丈夫なのか?笑、とおもいながらみた。彼女だけでなく、ああいう環境に身を置くひとはどうしてもああなってしまいがちで、でもみえないところでたたかってくるしんでいるのかな、とも。
・ラスト。買い戻そうとしたギターが売れてしまい沈む心の元に、実は慎吾が彼女のギターを買っていて届ける、というシーンはありきたりだとおもった。ありきたりだけど、特別じゃなくても、やりたいことやっていいんだ。すきなひとすきでいていいんだ。
「執着を捨てる。」「執着と大好きは別物。」自分にとっては何気ないひと言だとしても、それがだれかの人生を変えることだってある。
・生きてるうちに、叫べ。
り