ささみ

グレート・インディアン・キッチンのささみのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます


こういう男、いるよね〜!少し注意しただけで不機嫌になったり、自分は何もしないくせに注文だけは一丁前にしてきたり...。そうやって洗脳されていくうちに自尊心を削がれ、ああ、これはモラハラなんだなって気付けなくなる。
早くブチギレていいんだよと終始心の中で応援上映。平気で尊厳を傷つけてくる奴の言うことなんか、聞く必要ない。ほぼ現代ホラー。

九州の田舎を知っている者として、既視感が半端ない。とにかくお盆はそれが如実に表れる。女(そしてそれには当時中学生だった私や、小学生だった妹さえもカウントされている)のみが立ち回り、些か広すぎる居間(土地代が安い!)の畳に座って酒を呷るばかりの男たち。そんな気持ち悪さが鮮明に甦る。しかも本作ではそれを毎日浴びせられる。
片付けまで描いた料理シーンには作り手の真摯さを感じた。

さらに、映画『パッドマン』や『ピリオド -羽ばたく女性たち-』、著書『生理用品の社会史』などを事前にインプットしていたため、忌むべきものを履き違えている滑稽さが目立った。
他のレビューにも散見されるが、最初に出たThanks Scienceの文言に全てが集約される。そもそも宗教やこの世の様々なものの多くが誰の手で誰のためにつくられたものであり、誰がその対象外とされているかは考えるまでもない。

また、『82年生まれ、キム・ジヨン』や『透明人間』を彷彿とさせる構成は圧巻で、発達したITと今なお残る因習との混在バランスやその矛盾の炙り出しも絶妙。特に解放を表したダンスシーンは必見。未来の女の子たちにはせめてもと託す主人公が指揮するリハーサル風景は何より力強く、輝きを放つ。
ヤバイ家は捨てちゃえ!

一方で、ラストシーン
あの元夫には「何か知らんが突然キレた女」くらいにしか映ってないんだろうな...と同じ言語を話しているのに全く伝わらない絶望感に苛まれた。
目の前の相手と対話することより、そんなにプライドや上下関係が重要だろうか。思わず悲しくなる。
構造自体が変わらないと根本的な解決にはなり得ないので、これ以上犠牲が出る前に変革を求む。

SMASH THE PATRIARCHY❗️
ささみ

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