アスガー・ハルファデイ監督作は大好きで、でも映画館での鑑賞は初めて。
土曜午後のせいもあるだろうが、映画好き風の若い男性が多いのは意外だった。
恋人が拾った金を、借金の返済に充てなかった罪人が英雄に仕立て上げられ、またその後辿る顛末を描いていく物語。
拾ったお金を届けるという、普通の行為をしただけの彼。マスコミに褒められて、ほんのリップサービス程度の誇張が嘘になり、疑いを抱かれるとそれを誤魔化すために、雪だるま式に嘘が拡大していく。
あー、それ言っちゃだめ！
それ、やめといた方がいいよ！
画面に向かって声かけたくなる事多数。
でも、自分が当事者だったら、彼と同じことをしないと言い切れるかな？
イラン文化との違いを感じながらも、話の根幹部分は、どの国の誰にでも起こるような事で、他人事とは思えない。
この、何を言い、どう振る舞うべきだったのかが不明解で、胃がキリキリし、正しさとは何かを突き付けてくるのがハルファデイ作品の大きな特徴で、私の大好きな部分。観たばかりの「由宇子の天秤」にも近いテーマをを感じた。
わかっている事実と、私達の目にだけ明らかになる真相が謎解きとして面白く、ミステリー作品としても見どころ充分だった。
最も印象的だったのは息子がカメラを前に、とある台詞を練習するシーン。
健気で切なくて涙が出た。
