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英雄の証明のperipateticSのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
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単なる心理戦といえば簡単なのだけど、
相手の回答次第で出方が変わるような、「事実」をベースに重ねられていく嘘と真実の暴露...という具合に見事にボタンの掛け違いが起きる。
それも、見る角度によって真実性が変わるような「事実」ばかり。作中繰り返される嘘が、「真実である」と証明できないがゆえに「嘘」になる点がポイント。こういう類のミスコミュニケーションは現実でも往々にしてある。

アスガーファルバディの作品は全部そんな感じで心情描写がリアルすぎてハラハラする。あとは、大人のいさかいに巻き込まれる子供たちが必ず登場する。大人たちが如何に巧妙なようで愚かなコミュニケーションをしているのか、子供たちのピュアネスはそれらを際立たせるための手法か。

今回は従来の作風に、snsやメディアといった厄介でかつ人物の承認欲求と絡みやすいアイテムがトリガーになることがプラスされたかんじだった。

相変わらず多層的な感情の描き方は絶妙すぎて、思わず登場人物と一緒になって心を痛めるレベルだった。これはまた見たい。
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