このレビューはネタバレを含みます
登場人物が問題に直面しているのに何も解決できずにあがく様子や、やり場のない感情がよく描けている。報われないラストは徒労感に襲われ、しばらくうなだれた。
アラサーになってしまった自分だが、息子の心情にとても共感できる。漠然と辛いという感情だけがあり、はっきりした原因が何か分からない。学校生活や勉強、親からのプレッシャーなど当てはまることはあってもそれが全てではないし、それらが解決すれば今の状態が良くなるかと問われてもイエスとは言えないだろう。それを言語化できないから父親に何も言い返せず、また自暴自棄に陥っていくのが見ていて辛かった。
父親も少なくとも自分は最善を尽くしているのに息子は回復せず、論理的な説明を求めて息子の向き合おうとするが、息子がそれを返してくれないし、その理由が分からない。客観的に見てもそれほど問題のある父親には見えないので(離婚や異性の問題はあったようだが)、こちらの心情もよくわかる。
結局、明確なアンサーや提案すらないまま映画が終わってしまったのも辛いところ。現実にそうやって自分の命を絶ってしまう人は大勢おり、問題提起としての映画でもあったのだろう。
特にこれから家庭をもつ大人が見るべき映画だと思った。解決策は分からなくてもいいので(というかあったら現実の社会問題はもっと少ないはず)、こういう問題があるということだけでも知ってほしいなと思った映画だった。
