だいき

ミラベルと魔法だらけの家のだいきのレビュー・感想・評価

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
4.3
2021年公開映画85本目。

南米のディズニープリンセスは眼鏡。

2022年アカデミー賞長編アニメ映画賞受賞作品。
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ長編作品記念すべき60作目。
2019年、ディズニーファンである9歳のローリという子がウォルト・ディズニー・カンパニーのCEO、ボブ・アイガーにこんな手紙を送った。
「眼鏡のディズニープリンセスを作ってくれませんか?」
この手紙で切実に訴えた子はずっと眼鏡をかけて生きてきたが、これまでのディズニープリンセスはどれも眼鏡をしておらず、自分を投影できるキャラクターがいないことに寂しさを感じての行動だった。
眼鏡をかけているキャラクターはオタクなど属性的に扱われることも多く、そんな先入観も不満だと述べていた。
その切なる願いが届いたのかは分からないが、遂に初の眼鏡ディズニープリンセスが登場した。

主人公は王族関係ではないため、厳密にはプリンセスではないが、もうその辺の条件とかはどうでもいいらしい。
他にも特筆点と言えば、初の南米のディズニープリンセスとなったという部分。
これまでディズニーは個性を出すために昔から世界各地を題材にプリンセスを描いてきた。
『アナと雪の女王』は北欧、『モアナと伝説の海』はポリネシア、『ラーヤと龍の王国』は東南アジアと続き、今回は南米、コロンビアを舞台にしている。
さらに、本作の主人公は特色があり、古きディズニープリンセスはどうしてもスラっとした規範的な体型の女性だったが、今回はそういう女らしさをなぞらないデザインになっており、なおかつ恋愛がメインでもない。
この辺りは『モアナと伝説の海』、『ラーヤと龍の王国』から継続している最近のディズニープリンセスのスタンスでもある。

ミュージカルアニメとしての濃密さはディズニー歴代トップクラスで、過去作と同じようにミュージカルは盛り沢山だが、本作は魔法の家が舞台で、しかもほぼそこから動かない。
その地味さを吹き飛ばすようにこの魔法の家がとにかくリズミカルに音楽に合わせて動き回る、連動する。
まさにアニメーションならではの魔法を見せてくれる。
最近のディズニーは明らかに脱体制、脱規範に作品の方向性を向けており、本作も表向きのルックはディズニーらしさを変えずに、それでも中身は新しい時代に相応しいものにリフォームしている。
このさりげない手際は見事。
『塔の上のラプンツェル』、『アナと雪の女王』、『モアナと伝説の海』では特殊能力のある女性がそれを使いこなすことでリーダーになっていく物語だったが、本作では能力なき女性でもリーダーになれることを描いており、また一つステップアップしたのではないか。
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