殺る気なヘンリーシルヴァ

ジャンク・アップ・シティの殺る気なヘンリーシルヴァのレビュー・感想・評価

ジャンク・アップ・シティ(1992年製作の映画)
3.3
派手なアクションどころかアクションがないのだがなかなかブルックリンの闇とその中での真っ当に戦おうとする男達の熱いドラマがみられる良作

ジャケットではマリオヴァンピープルズが主演かのように飾られてますが主演ではありません
というより中盤で退場します

今作は主人公1人を作りその人に焦点当てたというよりはブルックリンの警察、刑事達を描いたという感じの作品


主な登場人物は
警察側では

黒人警察官のロバート(マイケルボートマン)とレイ(マリオヴァンピープルズ)のコンビ

白人刑事の古株ダニー(ピーターボイル)とイタリア系のビクターコンビ

犯罪組織側では過去の犯罪歴から仕事にありつけず困った挙げ句に不安を抱えながら裏社会に手を染めていく
プリンス(モリスチェストナット)

をメインに描いてます



物語は序盤はプリンスが裏社会に呑み込まれていく様を通して社会の表と裏側を描き

中盤では黒人警察官コンビのロバートとレイのコンビがメインになり
刑事ビクターに黒人がこの街に来てから秩序がなくなったと同じ黒人であることからとばっちりをくらいながらも
臆することなく自分達なりに守るものがあると信念をまっとうし職務にあたる姿を描きながら

プリンスが所属する麻薬組織のボス"ジャスティス"によってレイが撃たれ殉職するまでが描かれます


後半からは
レイ殺しの"ジャスティス"を捕まえるために奮闘するダニーとビクターの刑事コンビを焦点に当てて幕が閉じるという

序、中、終盤で焦点を変えながら1つの出来事を追う形で描いています


個人的に良かったのは
まず刑事、警察官4人のやり取りが中々熱かったところ

それは、中盤イタリア系のビクターは、無差別に子供と美容院の女性を射殺した事件を受け
犯人と同じ黒人であることからレイ達にあたるものの
実はレイとロバートを憎んでるわけでもなんでもおらず怒りからあたってしまった事が発言の前に説明がされており

レイが殺されてからビクターが同じ仲間が殺されたという怒りからジャスティスを追う執念を垣間見たロバートは喧嘩こそしたものの自分と同じくらいレイの仇を討とうと執念を燃やすビクター、ダニーコンビと距離を縮めながらも2人とは別で警察としての職務を放棄し復讐のため独自に動き出すという

一連の展開が中々に熱く盛り上がります

終盤になると
そんな中その事を知ったダニーはそんなことで警察をクビになるのもまずいと
ロバートを説得しにかかるも
そこでダニーはロバートから悩みを聞きます
それは犯人を捕まえないといけない、レイとの約束を守らないといけないという責務から眠ることすら出来なくなってると相談を聞き同情しながらも

後は俺たちに任せろ、必ず捕まえるからお前はレイが言っていたようにこんなクソな世界であっても尚、前向きに頑張る人達をレイの分も守るんだと
ロバートを説得させるという

これまた良い感じの話が展開します

そして、古株としてのコネを使い犯人の居場所をあぶり出し何とか犯人を捕まえます

その後のシーンで警察達の闇が少し描かれます
それは、捕まえる際犯人の部屋に突撃した部隊の隊長がダニーとビクターに
犯人と3人だけにしてやるから好きにして良いぞと持ちかけ
ダニーは規律正しい性格なため断るも
その後も隊長が階段の前で犯人を突き落とすか?と勧めそれも断ると

「変わってるな、司法制度なんか信じるのか?」というセリフが流れるとこです

他の刑事ドラマでも見ますがいくら警察が努力して血と汗を流して捕まえても裁判で勝てないことも多いし勝てても数ヵ月で相手はムショから出てくるという無茶苦茶な状態で
そんな事から違法な警察の暴力まで出てきているのが
作品全体の流れを通して確かにな~と思わされる作りになっており
結構、刺さるセリフとなっています


そんな問題シーンもありながらも話しとしては最後はキレイに納められており
最後は事を終えパトカーに乗るロバート、ダニー、ビクターが写るなか

ビクターの語りで1ヶ月後に無事、古株ダニーが退職したこと
そして、退職パーティーで刑事生活のなかで一番印象に残ってる光景はと聞かれ
「警察が寝ている姿」と答えたというセリフと共に
事件が解決しレイとの誓いもようやく果たせたことで安心してパトカーの後部座席で眠るロバートが映り幕が閉じるというなんとも素敵な終わり方でした


総じて色々と考えさせられる問題とその中でもがき苦しみながら戦う人達をドラマチックに描いた中々の良作に感じました