Niylah

スルー・ザ・ファイヤー 炎の傷跡のNiylahのレビュー・感想・評価

4.5
火災現場で全身に大火傷を負ってしまった消防士とその家族の苦悩/葛藤/再生の物語。鑑賞中、もし私が彼だったら?彼の妻だったら?と常に色んなことを自問し続ける作品だった。

原題『Sauver ou périr』は、Brigade de sapeurs-pompiers de Paris/パリ消防旅団の標語で
『Save or perish/救うか果てるか』という意味。

火事のシーンや大火傷後の病院でのリハビリシーンなど、平常心では観ていられない…。火災現場の臨場感や彼の苦悩が伝わってきて直視出来ず再生速度をあげて鑑賞した。そうでもしないと無理だった。

「なぜ自分がこんな目に?」

「人生は俺を置き去りにした」

私だったら自分の顔や体が火傷で醜くなることに耐えられない。生きる希望を失ってしまうと思う。そしてそんな自分を支える家族や恋人や友人に申し訳なく感じてしまうと思う。周囲の人の愛が苦しい。気をつかっているのが痛いほどわかると思うから。引け目を感じて生きていくのはとても辛い。一番辛いのはもちろん本人だろうけど支える家族も辛すぎる。私が彼(消防士フランク)の立場ならどうするだろう。配偶者/恋人には自分とは別れて別の人生を歩んでほしいと思う。けれど、結婚して子供がいて家族として築いてきた関係があれば違うものなのかな?自分がどんなに辛い状況でも、子供の成長を見たいと思うのかな。もし子供の立場だったらどんな状況でも親に生きていてほしいと思うのかな?わからない。恋人だったら?妻だったら?どんな状況でも嘘偽りなく愛せるのかな?即答できない。辛い事故・事件・病気などが変容させるのは外見だけではなく、中身までも。心まで蝕んでしまう。家族や恋人そして友人、愛する人がいることによって生きる希望や気力がわいてくるのかもしれない。その事実が救い。

「人生は砂だ
すべては消え去る
若さも美しさも力も顔かたちも
消える運命だ すべてが
例外は人生における選択と感情かも」
Niylah

Niylah