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ずっと独身でいるつもり?のRのレビュー・感想・評価

ずっと独身でいるつもり?(2021年製作の映画)
3.5
『ずっと独身でいるつもり?』

雨宮まみ著のエッセイを原案にした、おかざき真里のコミックが原作。
フリーアナウンサーで女優としても活躍する田中みな実が初主演を務めた作品。

結婚するかしないか、子どもがいるかいないか、仕事をしているかしていないか。
友人や周りの人と同じ道を歩んできても、特に女性は、ある時から様々な選択と生き方に、枝分かれしていく。でも、自らの選択であるとはいえ選択に後悔もつきもので、周りの女性の姿こそが幸せの最適解に思えてくることもある。
ただ結局、そこに「自分らしさ」がなければ選んだ道は空虚なものになり、他人の道を真似たところで心は満たされない。
自らの価値を「若さ」などの変化するものや他人からの評価で決めたり。わかりやすい基準ほど移ろいやすく、いつしか自分をすり減らしていく。
本作では、人生の様々な選択肢を前に揺れ動く、多様な立場の女性の「地獄」が描かれている。

特に印象的だったのは、クライマックスでの、主人公・まみの独白。まみの心の叫びが、「アイコンとして支持を集めながらもある意味あるべき姿を求められる」田中みな実本人と重なって、あくまでセリフだけれどまるで田中みな実本人の心の叫びかのように、胸に迫るものがあった。

気になったところとしては、主人公・まみと友人・彩佳のキャラ設定。まみと彩佳は、ある種すでに成功している人たち(まみは著書が大ヒットしライターとしての地位を確立していて、彩佳は主婦業の傍ら行うインスタグラムにかなりのフォロワーがいる)で、そういった意味では少しリアリティに欠ける部分も。特に彩佳は、普通の主婦設定でも良かった気が。

そして、もうひとつ気になったのが、男性キャラクターの描き方。「ずっと独身でいるつもり?」はきっと、女性だけでなく男性にも当てはまる言葉。本作の大元の原案のエッセイが女性の生き方をテーマにしているからかもしれないけど、女性の生きづらさと連帯を描くだけでなく、男性の生きづらさにも触れていたら、さらに深みのある作品となったのではと感じた。


ストーリー全体としても、少しご都合主義だったりステレオタイプで展開が読める部分があったり、それこそ劇中で言われていたような「めちゃコミ」みたいな展開多め。
ただ、市川実和子や山口紗弥加、筒井真理子など脇を固める俳優の安定感で、作品が締まったものとなっています。

そして、個人的に惹き付けられたのが、劇中のファッションやインテリア。メインキャラクターの4人やまみの彼氏・公平などの持ち物やインテリアが、一発で人となりが分かるような絶妙なチョイスで、製作陣のこだわりを感じてグッときました。

ヒリリとするような内容ではあるものの、美しい映像やスタイリッシュな音楽で、あくまで重すぎず観られる作品です。
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