手を伸ばすきはなかったが、90分尺という魅力に大敗を喫し、視聴。
一つ前に見た類似作品『ルーム』が伽藍堂だったというのも背中を押された要因。
学びや教訓は得られないだろう稀有で悲惨な実話もの。
人の不幸に生を実感し、悦に浸る。それくらいのものだろうと高を括っていた。
だが、ただのエンタメ、不幸の押しつけには留まらず「愛」について考えさせられる映画に昇華されていて驚いた。
実際、終始、苦虫をガムのように噛んではいたが。
ただ、そこに、当たり前のように存在する子供たちは『ルーム』とは比べ物にならないほどに空しさを感じる。
理不尽、に晒された子供たちの悲痛な叫びに胸が痛くなる。
だけど、思いやりの心を持った優しい子供たちを見て、しっかりと「愛されて」育ったんだなということが分かる。
「パパ」と呼んだこと。
「パパ」と呼ばれたこと。
お互いの、僅かに残されていた「愛情」によって、事件は収束する。
やっと、解放されたという安堵に、ホッとして涙腺が緩んだ。
その感情には「愛されなかった」であろう父親への同情もほんの少し入っていたように思う。
この滅茶苦茶シビアな題材に「愛」をねじ込んだ監督はすごいと思う。いや、脚本か?
根っからのサイコパスなんて、きっといない。
最後はハッピーエンドにしてくれてありがとう。