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THE FIRST SLAM DUNKのnocchiのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.3
がっつりスラダン世代で、漫画もアニメもリアルタイムで履修済みだが、PVで本作を知った時は別に観たいとは思わなかった。
が、周囲があまりに絶賛するので一人で鑑賞。
結果から言うと見てよかった。何度も泣いた。
こういう、煽ってくれる作品に出会えると、映画好きでよかったなと思う。

ジャンプ黄金時代アニメの新作を出して30〜40代向けに売上を立てようという腹の作品では、と捉えていたが、コンセプトがかなり違いそう。
原作派向けと言われていたのがよくわかった。たしかに、伝説の試合で、馴染みのキャラクタ、決め台詞が並び、セリフをなぞってしまう程度には感傷はあったけれど、本題はそこではない。

本作では、とあるキャラクタにより語られる視点が入る。
近いものがありすぎて、かなり自分を重ねてしまい、キツかった。

二度と還らない、敬愛する人。
せめて、その人の代わりになれるくらいの自分でありたいのに、大事な人を困らせ、泣かせてばかり。

あの人だったら、きっとこんなことにはならなかった。
泣かせてごめんなさい。生き残ったのが自分でごめんなさい。
せめて誰かの理想になろうとしても、周囲の理想と本当の自分が迎合しない。
誰にも100点をあげられない。
それでは、自分が生き残った意味はなんだろう。
誰かの代わりに、自分が生きている意味はなんだろう。

どうすればいいんだろう。
誰かに守って欲しいとかじゃないんだ。
代わりなんかじゃなくて愛されてることも、本当は頭ではわかってる。
自分だけのフィールドで勝負して、それで求められたら、自分を最高だって思える。でもそれは自分だけじゃ、成立しないんだ。

赤城の、「お前らなんて好きじゃない、でも」のセリフが本当にいい。
いいなあ。羨ましい。
自分にもかつていた、たった一人の、肩を並べて戦ってくれる人。
もう絶対に帰ってこない、永久欠番。
でも、そのポジションの人にまた出会えないのは、自分が試合に出て、勝負してないからなんだな。
スキルが高いとか本当はそんなこと問題じゃない。誰もが、自分を諦めずにやり続け、その軌跡が、自分や誰かの勇気の糧となるだけ。
あまりにも長らく孤独が続いて(上とか下にはいるが横がいない)、つい、ぬるい環境で自分を守っていた、気がする。

誰かに夢を託していないで、できること、全部、自分の手で、打ちのめされて、痛い目に遭いながら、やらなくちゃ、だめだ。
失敗してもいいから、もっと。
そうじゃなきゃ、次にあちらで会う時、顔向け、できない、よね。
わかっちゃいたし、やってるつもりだったけど、まだまだ、手ぬるかったなと反省。

井上先生はバスケ漫画の人ではないんだな。
この人は、作家に近い。自分がこうありたいという思う「作品の作り手」に近い。色んな意味でたくさん泣けた。いい時間だった。
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