じょうだいさんの映画独白

余命10年のじょうだいさんの映画独白のレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
4.1
新聞記者、デイアンドナイト、ヤクザと家族で日本社会の闇にスポットライトを当てた藤井道人監督。

恋愛映画のような予告と宣伝とは裏腹に、原作者小坂流加への賛辞から生まれた作品。

原作の「余命10年」自体が、余命宣告を受けた原作者の「こうありたかった人生」が描かれており、闘病生活の体験談を啜ったものではなかった。いわゆる大ヒット小説の実写映画化とは大きく異なる、理想と現実を一つに統合した異色作になっている。

これまでの監督作に共通点があるとするなら、「日の当たらない場所にカメラを向けてすくい上げる」という事をやり続けていると言える。

原作者の「こうありたかった理想の人生」が映像化され、邦画界に青い感情の爆発を植え付けたRADWIMPSの音楽によってそれは最大化され、小坂流加の想いと彼女の生きた短い人生を肯定する。

その様はそのまま、当たり前の日常を怠惰にやり過ごす我々現代人にとって胸にくるものがある。

藤井道人監督の色は過去作よりは薄まってはいるが、映画監督としてこれ以上ない仕事をしている。

レビュー動画
https://youtu.be/rCTgFXW6wvg