ななこっこ

余命10年のななこっこのレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
4.1
とても感動できる映画だった。
主人公の茉莉の余命10年の期間を描いた作品なんだけど、家族・友達・恋人からのさまざまな形の愛があって、そのどれもが優しくて思いやりに満ちていて、どんな人が見てもどこかの立場で共感できるシーンがあると思った。今まで強がっていた茉莉が家族に向かって初めて恐怖を打ち明けるシーンでは本当に本当に泣けた。

折々に桜の花びらが舞ったり、花火大会に行ったり、銀杏の並木の中を歩いたり、スノボに行ったりが描かれていた。
葉っぱの色とか風の感じで何月かまで分かるくらい、日本は四季がはっきりして美しい国だと思える一方で、刻一刻と迫る死の足音が聞こえてくるようなつらさもあった。

同じように茉莉の恋人の和人も初めは生きる事を諦めて自堕落な生活をしていたけど、茉莉と出会って生きる喜びを見出し、同時に茉莉は和人と出会う事で死への恐怖を感じていき、徐々に弱っていく姿が対照的だった。

余命10年って、難しい期間。猶予はあるからある程度やりたいことはできるのに、人生でやりたい事を詰め込むには短い。
もう少し短ければある程度割り切ることもできるけど、楽しかった思い出や人生の幸福な瞬間を噛み締めながら死んでいくことになるから、それを思うとつらい。
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