Hiroki

パリピ的アフターライフの始め方のHirokiのレビュー・感想・評価

4.1
今年ももう1ヶ月を切ってきたので今年観た映画でレビューしてなかったもの(基本配信が多い)をちょいちょい書いていこうと思います。

ということでまずは思わぬ良作だった今作。
謎すぎるタイトルから察するにラブコメ満載のポップコーンムービーなんだろうなーと誰もが思うはず。
しかししかし中身はファンタジー要素あり、笑いあり涙ありのめちゃ良い物語。
これは完全に邦題で損してます。
Netflix Jpapnの人、見直した方が良いと思います。

さて内容ですがパーティープランナー(そんな職業あるのか…)のキャシー(ヴィクトリア・ジャスティス)は25歳の誕生日を迎える前に二日酔いでトイレで滑って便器に頭を打って死んでしまいます。
そしてあの世とこの世の中間地点で守護天使のヴァル(ロビン・スコット)に出会い天国に行くためには現世でやり残した人々との関係を修復しないといけないと言われます。
その人々が死ぬ直前に喧嘩してしまった親友リサ(ミドリ・フランシス)、うざくて疎遠になっていた父親ハワード(アダム・ガルシア)、自分を捨てた母親ソフィア(グロリア・ガルシア)の3人。

死後のキャシーが現世に関与するというファンタジーなのでルールというか制約があって、現世の人々には見えないし声も聞こえない。しかし現世にある物には触れる事ができます。
ただ物を動かすだけで関係を修復するのはかなり厳しそうじゃないですか?
なのでもう一つ特例として親友のリサには見えるし話せるようになります。(リサは古生物学の研究者で雑念が少なくキャシーとソウルメイトなので奇跡的に見えたという説明。)
この設定が絶妙で、このリサを介して父親や母親との関係も修復していこうと動き出す。

しかし正直父親との軋轢は“少しウザくて疎遠だった”というだけだし、母親は“自分を幼い頃に捨てて新しい家族を築いている”のでそれをキャシー自身が受け止めて許せるかという問題なのであまり修復するために動きようがないんですよね。(ただ母親がキャシーを捨てた理由は少し曖昧で現実世界ではそんなものなのだろうけど、映画的にはそこが弱いように感じた。)
まーでも2人のために頑張る“パリピ”キャシーはとてもギャップがあって良かったけど。

1番のテーマはたぶん親友リサとの修復関係で、同い年幼馴染だけどパーティープランナーと古生物研究者という違う人生を歩む2人。
時にはぶつかり喧嘩もするけどでもやっぱりお互いを必要としている。
足りないモノをお互いが補い合う。
キャシーはリサとの関係修復のために彼女が良い感じの隣人マックス(ティモシー・レヌーフ)とくっつけようとしてうまくいくがその後キャシーが突然泣き出してしまう。
理由を尋ねるリサにキャシーは「もー私はキスも最高のデートもできない。でもそれより最低な事は親友の成功を、バージンロードを歩く姿を、母親になる姿を見られない事」と答える。
このシーンが最高なんですよねー。
リサ役のミドリ・フランシスのグッと堪える演技が素晴らしい!

友達でもパートナーでも家族でも同じ考え方や価値観でずっといられるって事は難しいと思うんですよ。
年齢や環境が変わればやはり変化していくもの。
でも変わらないものも絶対あると思う。
変わっていく事と変わらない事。
そして大切な人への想い。
そーいうモノをしっかり相手に伝える事の大切さをこの映画は教えてくれた気がします。

ただ感動一辺倒になりすぎず、ポップな音楽やクスッと笑える所など気楽に見れるような演出を取り入れたバランスの良さも光ってました。
お見事。

先程も出ましたがキャストではミドリ・フランシスがとても良いです。
Netflixドラマの『ダッシュ&リリー』で有名になり『グッドボーイズ』などに出演して、今はHBO MAXドラマの『The Sex Lives of College Girls』にメインキャストで出演してるみたいですね。(ちなみにこのドラマはティモシー・シャラメのお姉ちゃんポーリーン・シャラメも出演しているようです。)
彼女は父親が日系・母親がアイルランド&イタリア系でほとんど白人しかいない街で育ったのでかなりイジメやヘイトを受けていて、コロナ禍でも外を歩いていていきなり唾を吐きかけられたりしている。
しかし日本の血を誇りに思っていて、第二次世界大戦時の日系アメリカ人の悲惨な様子などを調べて発信したりしています。
意志の強さが演技に湧き出る素晴らしい役者。
これから注目していきたい1人です。

2021-118
Hiroki

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