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死刑にいたる病のRのレビュー・感想・評価

死刑にいたる病(2022年製作の映画)
4.1
櫛木理宇の同名小説を『孤狼の血』の白石和彌監督、阿部サダヲ主演で映画化。

望んでいたレベルの大学に入れず、家庭にも居場所がなく、鬱屈とした日々をおくっていた雅也(岡田健史)。ある日、雅也のもとに1通の手紙が届く。送り主は、パン屋を営んでいた榛村(阿部サダヲ)。そのパン屋には、かつて雅也も通い、雅也は榛村に気を許していた。だが榛村は、23人の少年少女と1人の成人女性を監禁し殺害した容疑で逮捕され、死刑判決を受ける。榛村は、雅也に、成人女性を殺害した事件は冤罪だと主張し、真犯人を探すよう依頼するが・・・。


まだ5月ですが、勝手に今年度の「胸糞オブザイヤー」に賞したいと思うぐらいの怪作。

上映時間は2時間ちょっとで、ごく普通の映画と同じくらいですが、早く時間が経ってほしいと感じるくらい、劇中ずっと気持ち悪さや心地悪さが漂っています。


見どころとしてはやはり、キャスト陣の熱演。
本作の主人公で連続殺人鬼・榛村を演じた阿部サダヲ。
もちろんやっていることは最低最悪なのですが、所々で「もしやいい人かも?」と錯覚してしまうくらいの親しみやすさと穏やかな優しさを見せ、それによって、気味悪さがさらに増していきます。
最初から最後まで一貫して得体が知れず、まさに阿部サダヲの真骨頂というべき怪演を見せています。

また、謎の男・金山を演じた岩田剛典は、これまでのキラキラとしたイメージを覆すような、怪しげで影のあるキャラクターを好演。揺れ動く複雑な心の内を、繊細な表情で魅せています。

そして、特に印象的だったのが、榛村と対峙する大学生・雅也を演じた岡田健史。
内気で自信なさげな序盤から、榛村と事件に関わっていくうちに、次第に蝕まれるように異なる表情を見せていく雅也。
ネタバレになるので詳しくは避けますが、かなり感情の振れ幅が大きい役どころを、見事に演じきっています。

その他にも、面会室での対峙シーンでの映し方や、榛村の二面性を体現するような残虐なシーンと何気ない日常のシーンのギャップ、食欲が失せるくらいの残虐ストーリーなのにどんどん出てくる食事シーンに気まずさ満点の地獄の晩酌シーンと、思わず唸る演出も豊富。 


思わず目をそらしてしまうくらい、残虐な描写が多めで、暴行や虐待、悲鳴や泣き叫ぶ声などもガンガン出てきて、精神的にもかなりやられます。
レイティングはPG12ですが、個人的にはR15級の体感でした。

正直、安易に勧められないくらい、救いのない胸糞ストーリーですが、作品としての完成度はかなり高め。
何といっても俳優陣の熱演が素晴らしく、ぜひ賞レースで評価されてほしいです。
早くも今年度の邦画の個人的ベストに食い込む一作になりました。


ストーリー:8/10
メッセージ性:7/10
キャストの輝き:9/10
映像の美しさ:6/10
感動:2/10
ほっこり:1/10
ユーモア:2/10
怖さ:9/10
残虐さ:9/10
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