岬の兄妹を初めて観てから、片山慎三監督の存在がずっと頭から離れませんでした。商業デビュー作、そして私にとって片山監督の初劇場鑑賞作品は、5ではスコアが足りない傑作でした。
予想のつかないミステリー要素でハラハラさせながら、片山監督らしい、日本の暗部を抉り出すような脚本と強いメッセージ性。どれを取っても最高です。
佐藤二朗さんの主演はまさに大正解でした。最初は飄々とした雰囲気を纏いながら、どんどん人間的な部分がさらけ出されていく展開を完璧な演技とともに魅せてくれました。いつものコメディ的要素も持ち合わせつつ、その中に隠れた悲壮感や強い覚悟には圧倒され、新たな佐藤二朗への出会いという意味で、はるヲうるひとと同等か、それ以上のインパクトがありました。
佐藤さんと女優陣のいくつかのやり取りでは、女優さんにだけ知らせて佐藤さんは全く知らずに仕掛けた演技が数箇所あったようで、名言されていた部分は確実に演技とは思えないリアルな感情の噴き出しを感じました。リテイクを何度も重ねたりと、監督の作品への情熱や創意工夫があってこその完成度なのだと感服しました。
特に好きなのは予告編にもあった2人の卓球のシーンです。会話の空気感とラリーのテンポが見事にマッチしていて、思わず震えました。
あととにかくミカンが美味そう。季節的にもぴったりですね。
