ボギーパパ

あのことのボギーパパのレビュー・感想・評価

あのこと(2021年製作の映画)
3.4
劇場2023-2 ② DENKIKAN

昨年のノーベル文学賞受賞者アニー・エルノーの実体験を元にした作品で、21年ヴェネツィア映画祭金獅子賞をポン・ジュノをはじめとする審査員満場一致で獲得した作品とな。

1960年代のフランスは中絶が違法であったそうな。知らなかった、、、が中絶を認めない
カトリックの国でもあり、社会慣習上当時の女性は今よりずっと生き辛かった事は想像に難く無い。
そして主人公アンヌは希望しない妊娠を、、、
からはじまる本作。

中絶すれば投獄される社会。
インターネットもまだ無いし情報も図書館で
しかとる事ができない社会。
こんな社会において、家族にも、友人にも、そして当事者である男性にも、誰にも話せず悩むアンヌの姿は、本当に忍びない。人間思い悩むと何をしでかすか分からない。

やっとの思いで頼りになりそうな人を探し出し、思いを絞り出し、助けを求めるも、、、
中絶する側も、させる側も罰されるのだからそれぞれの思惑が働く、ここも忍びない。
罰されるとなると、闇に潜るのも社会の常、、、

こんなことを思いながら観ていると衝撃をもってわかったことは、思い詰めた人間は何をしでかすか分からないということ。ホントにゾッとした。
ラストに行くに従って、もはやホラーかスプラッターかと思うような描写もあり、鑑賞中身を捩ってみていました。この辺はどうしても男には分からんが、心の痛みに寄り添い、相手の立場にだけは立っていたいと思う。

とは言え、本作に描かれている題材、別に遠い昔のお話ではなく、現代社会においても、議論検討、理解を進めなくてはならない問題。世界のさまざまな所で問題視されたり、争議に至ったり。人間の持つ権利なのか、責任なのか。立場によって見方も変わるし、一概に結論を出す事ができない問題だ。故にこう言った作品を通じて、少しずつでも理解を深めていかねばならない。

アンヌは作家になると宣言。
人生を引き換えにしたくない思いも理解できなくない。
アニー・エルノーの実体験的私小説を元にした映画として、ノーベル賞作家の原作を読んでみようと思わせてくれた。



許せないのは
あの嘘つき医者とマキシム
こいつらはほんとにクソだな。

フランス映画はあまり俳優のことを知らずに観るから結構新鮮!先入観なく物語や映画の作り自体に没入できるのが良い!
ボギーパパ

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