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アビエイターのまるのレビュー・感想・評価

アビエイター(2004年製作の映画)
3.6
ディカプリオ先生が奇人変人をやってみたシリーズ第○弾。多才な富豪が好き勝手に夢を追いながらパワフルに生きているのだが、一方で何度も窮地にたたされ、強迫性神経症に悩み、心も体もボロボロになりながらも夢の実現を成し遂げていく。

彼が少年時代、quarrantineという言葉を繰り返しながら母親に体を洗われるシーンから物語は始まる。中学か高校の頃、検疫、という意味で単語帳で暗記して以来久々に聞いた言葉だけれど、ここでは隔離、というニュアンスで使われていた。彼はこの経験も原因となり、夢への道が断たれそうになる度に潔癖症がひどくなり、血が出るまで手を洗ったり、服を燃やしたりする奇行に走る。彼の潔癖嗜好(病気なので正確には嗜好ではないが)が何を意味しているのかは難しいところであるが、外部や現実から自らを隔離し、夢と向き合って突き進むよう、自分をふるいたたせていたことの表れなのかな、と私は思った。

夢の実現を目指して、邪魔者や汚い世界を排除し、自分の夢だけがあるきれいな世界に自らを没入させることで、彼は常人にはなしえないような偉業を達成していたんだろうな。精神病でなくても、天才の心の中ってこんな感じなのかもしれない。自分は自分の能力の限界の範囲内までの努力しかできない凡人なのに、目標に向かって努力を積んでいる過程ではつらいなぁとかしんどいなぁと感じ周りが見えなくなってしまう。みんながビックリするようなことをやってのけてる人はこれくらい苦しんでるんだろうな。

とまぁ、色々考えるところは多く、そして衣装と出てくる場面場面の内装が非常にきれいで、十二分に楽しめたのだけれど、長い!あと、テーマがマニアックな(富豪の映画監督兼航空機産業関係の実業家、かつ潔癖症の人なんてそうそういないでしょ)ので親近感が持てる人はほぼ皆無だろうし、評価が低めになるのはある意味当然。
ただ、自分を追い詰めて追い詰めて苦しんでいくディカプリオは見ていて痛々しく、彼のアカデミー賞がどうやってもとれなかった俳優キャリアのなかの一作と考えながらみてもつらくて、ディカプリオ見たさで見た自分としては哀愁たっぷりでとてもよかった。スコセッシ作品のなかではやや物足りない部類には入るものの、満足はできた
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