おかだ

猫は逃げたのおかだのレビュー・感想・評価

猫は逃げた(2021年製作の映画)
3.9
泥棒猫の猫泥棒


今泉力哉と城定秀夫によるクロスオーバー企画「L/R15」の第二弾は、今泉力哉が監督を、城定秀夫が脚本を互いに務めた「猫は逃げた」。

面白い映画でした。


離婚直前の夫婦が、飼い猫の所有権を巡ってウダウダやっていたところ、その飼い猫「カンタ」が失踪。そこに夫婦それぞれの浮気相手も絡んできてあれやこれやと揉めたりする大人のラブコメ。

ハリボーや足攣りなどの記号的反復は城定秀夫の好みでしょうか。


全体的に「愛なのに」と比較してもかなり起伏が緩やかで、今泉力哉監督っぽさがよく出ていた印象。

城定秀夫が脚本を書いただけあってか、ストレートな濡れ場が割と多い作品だが、今泉力哉監督にしては珍しい?
あまり多く見ていないので分からないが。
比べるものではないが、やはり城定秀夫は濡れ場を撮るのが異様に上手かったなと改めて思ってしまう部分もあった。

4人大集合での修羅場長回しは「街の上で」的な映画コント感があり、それまでの丁寧な積み上げもありかなり特殊なカタルシスを感じられる面白いクライマックスだった。
城定秀夫、これが言いたくて脚本書いたんだろうな。と思ってしまうほど見事に笑える見出しのセリフも素晴らしい。


それから個人的には回想でのカラオケシーンがベスト。
「花束みたいな〜」でも付き合いたての瑞々しい雰囲気と別れる直前の対比で使われたシチュエーションであるが、今作のあの不穏さはたまらない。
どういう演出の効果なのか、たしかにヒロが失踪しそうな予感やそれを覚悟したアコの何とも言えない表情と選曲がたまらなく良かった。


少ない登場人物も皆に愛着が湧くような素敵な造形で、毎熊克也が演じたどうしようもない主人公ヒロや、井之脇海演じた頼りない編集マンも良い。
そしてヒロイン2人の感じがさらに良かった。

あとはオズワルド伊藤だが、あの笑ってしまうくらいナレーションがしつこい劇中映画の粘っこさが妙にマッチしていて面白かった。
ただ必要だったかと問われると微妙。


そんなこんなで、箇条書き形式の適当なレビューとなりましたが、私は結構好きな映画だったのでお気に入り作品としてたまに見返すんだろうなと思います。

やはり安定感のある2人、今泉力哉と城定秀夫。
今後の新作も楽しみです。
間違いなくおすすめです。
おかだ

おかだ