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マクベスのmatsushiのレビュー・感想・評価

マクベス(2021年製作の映画)
3.9
舞台では見たことないけど、悲劇大好きマンなので内容はある程度知りつつ鑑賞。

リズミカルで演劇的な台詞回しという古典演劇の良さをそのまま残しつつも、スクリーンでしか表現できない映画的で視覚的な良さを400年愛されて来た作品に新しく付与している。そして何よりそれが不自然に感じないのは、コーエンの演出力と絶対的な演技力を持つ数々の役者たちがその理由。

言わずと知れた悲劇であるマクベスを構造的に分解すると本作の演出が示すようにフィルムノワールの特徴に沿っており、それゆえ、スタンダードサイズ、モノクロ、強めのコントラスト、陰影を使った演出、遠近感等々のフィルムノワール的演出が巧みに機能している。
加えて、舞台劇のような、寓話的で無機質なセットと小物などによって、舞台と映画を同時に鑑賞しているかのような感覚にさせる。

現代においても誰もが持ちうる人間の性、美醜をマクベスという数百年も語り継がれる名作と名匠ジョエルコーエンの演出で堪能できる贅沢な作品であることは間違いない。
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