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ダイアナ:ザ・ミュージカルのaのネタバレレビュー・内容・結末

2.0

このレビューはネタバレを含みます

故ダイアナ元妃の伝記ミュージカル。BWオープンが一度中止になって、再開前にNetflixで配信。

基本的に認められているダイアナのストーリーをそのままなぞって、そつなくまとめた可もなく不可もない作品。仕上がりはアメリカン。
飛び抜けた魅力はないけれど、音楽、衣装、舞台美術などは嫌いではなかった。
でも2020年にダイアナの物語を描くにあたっての、何か新しい解釈や物語の提示方法、あるいはテーマの深掘りがなされているわけでもなく、凡庸といえば凡庸。加入済みの配信サービスで配信されるとなれば喜んで視聴するけれど、BWに行ったときに観劇したいかは微妙レベル。
今出てる劇評は全部読んだけど、なかなか厳しめ。BWオープン後が心配になってくる。
多分、ダイアナの物語でなければまだよかったのではと思う。ただ、今語られる彼女の物語としては、物足りなさを禁じ得ない。Wikipediaのページを舞台に起こしたみたいという表現がしっくりきました。
タイトルも『ダイアナ』なのに、ダイアナ自身の視点がないのが致命的。外側の人たちが想像する理想的なダイアナ像に見える。そのほかの登場人物もしかり。やはりコメディっぽいのが題材と似合わない。

上演時間は2時間弱と短めで、内容も主要ポイントを押さえながらサクサク進んでいく。ダイアナという人物の複雑性を明らかにするというより、絶大な人気を誇ったダイアナという存在を現代的なエンパワメントに利用しただけのように感じられた。各曲はテーマを紹介しただけで特に踏み込まずに終わる。例えばメンタルヘルスとか、王室の矛盾とか、メディアやルッキズムとか、もっと焦点を絞って新しい解釈を示せばいいのに、単なるドタバタ悲劇みたいになってしまっていた。だったらフィクショナルな登場人物たちと舞台設定でやればよかったと思う。
製作者たちの間で解釈を決めきれず、当たり障りのない感じにまとめた結果、中途半端になってしまったよう。

歌詞も説明的またはノリが軽くて、仕掛けや意図が感じられない。
特にエリザベス女王に関しては、ミュージカルという形式との相性が噛み合っていなかったように思う。
もっとずっと複雑さを含んだ人物たちと出来事なのに、都合よく単純化しすぎだと感じた。
冒頭で、永遠に愛らしく美しいファッションアイコンという外見でジャッジされることを指摘する歌詞がある割に、まさにそのイメージを踏襲してむしろそこを作品の見せ場として押し出していく感じもよくわからなかった。
一部の曲は言われるほど記憶に残らないわけではないとは思うんだけど、代表曲のI'll Light the Worldが唐突。事故がなかったとしても、女王が離婚を許可してくれたからもう解放されて自分の人生を歩めるからハッピーエンド!とはならないじゃない…?エンパワメントの曲を先に作って後から脚本を無理に当てはめたような。

ロマンス作家とF××k You Dressを勧める秘書のコミカルさも、too Americanかつ題材と合ってないと思いました。上手くやれば馴染むのかもしれないけど、複雑でシリアスな題材でエンタメ志向を目指すのは難しそうだし、そもそもシリアスが深ぼられてないので軽さが目立っていた。
なんかMean GirlsのRevenge Partyのようなノリでチャールズとカミラにノリノリで仕返しをしていたけど、うーんそれでええんか…?感が拭えなかった💦

エンディングは、他に言うことなかったんか…というか、ないならないでもう思い切ってスパッと暗転して終わりでも良かったと思うんですよ。まだ観客が考える余地や余韻が残されるから。でも取ってつけたようなちょっとcheapなコメントで締めくくられてしまっていて残念でした。本来なら、彼女の人生についてコメントをすること=この作品を今上演する意味を提示することでもあったはずだけど、そもそもそれが定まってないから意味のあるコメントも出てこなかったのだろうなと思ってしまった。

ダイアナをめぐる出来事を何も知らない人が見る分には、あらすじをまとめてくれてるので便利だと思う。でもそれがどこまでauthenticと言えるのかはちょっと疑問かな…。
トニー賞受賞歴のある実力派が揃っている作品としては、残念な仕上がりだったと思う。

BWオープンにあたって変更が加えられるので改善されてるかもという噂を耳にしたので、どんなふうに変えるのかは興味がある。
とはいえ、多分公演期間中にブロードウェイ行くけど、チケット取る予定はないです…
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