フクイヒロシ

夜明けの夫婦のフクイヒロシのレビュー・感想・評価

夜明けの夫婦(2021年製作の映画)
4.5
面白かったぁ。悶えるほどに笑ったシーンもあるし、ずっと面白かった。


「映画らしさ」とか「リアルさ」に閉じ込められてない、演劇的な自由さがあるのが本当にいい。

監督が劇作家でもあるんですね。自分の劇団(城山羊の会)も持っている山内ケンジ監督。

終盤の、夢と現実、恐怖と安心が入り混じった演出が本当に素晴らしい。
「作り物・フィクション」を観れてるなぁと思う。
そしてちゃんとした作り物には人間の本質みたいなものが透けて見えてくる。

嬉しいなぁ、こういう創作。
人間そのものじゃないのよ。


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カットの切り上げっていうのかな。
カットが切れるタイミングが面白い。

予測できないところでバンッと切れて面白い。
笑いが起きる装置にもなるし、ドキッとさせられる。



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会話シーンが多くてそれがほとんど長回し。
カメラも固定。アングルも変わらないし画角も動かない。

緊張感と妙なおかしみもあるし、流れが生まれないのでどこでこのシーンが終わるのかが予測できない。

下手な人たちがこれやると死ぬほど辛いんだけど、、、、、やはり演出も演技も素晴らしいんでしょうね、ずっと面白かったんです。



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城山羊の会に馴染みのある俳優さんが多く出演されている模様。
(城山羊の会には劇団員という制度がない?)

●鄭亜美さん

妻役の鄭亜美さんはこれで大ブレイクするんじゃないですかね、映像の世界で。
使いたいでしょ、どんな役でも。主役もアリなのは今作で証明されたし、飛び道具として唯一無二の個性もあるし。

声小さくて小刻みに震える子鹿演技だけじゃなく、
夫を責める時とか、同じ韓国の女友達と密接に会話する時とか、義父との妙な空気とか、
その都度違っていて演技を見ているだけで楽しい。
そしてそれは人間の多面性を表現することにもつながってる。
最高じゃないの。




●石川彰子さん

義母役の石川彰子さん。ご本人は40歳なんですね。どう見てもカツラにしか見えないし60歳以上に見せたいんだろうけど全然見えなかった。

それもちょっと面白かった。演劇的な匂いがする存在。

リベラル派としてデモなどに参加するような人物なのに自分の嫁には「子供は作らないの?」と言ってしまうし、
孫が欲しすぎてノイローゼになってしまうというめちゃうぜー人物。

どんなに鬱陶しいか。こんな人いたら。。

でもこの義母は愛らしい。
孫を欲しがっちゃう自分に苦しめられているのがわかる。


●坂倉奈津子さん

名前忘れちゃったな。
夫の会社の上司役。夫と過去になんかあったらしいし今でも夫のことが結構好きそう。

その恋心が誤作動を起こして夫をじわじわ追い詰めるシーンが本当に面白かった。5人くらい殺して欲しかった。

「意外と外にはゴミ箱ってないもんよ、全っっっ然!」ってセリフ自体も面白いけど、
ちゃんと魂こもって言ってくれるから、意味以上に深い心理みたいなものを表現しているセリフにも聞こえてきた。


●岩谷健司さん

岩谷健司さんは僕はゴッドタンの人というイメージ(ごめんない)。
見ない日はないくらいの大活躍をされてますね、映画にドラマにCMに。

今作では、だるだるの初老の男なんだけど、エロスもあって陰ではちょこちょこ遊んでいるらしい。
でも家族には丁寧だし優しく接する。
有害な男性性というのをあまり出してない人物。

途中で犯罪級の酷い暴走をしてアレは擁護できないけど、、、
家族というものをうまく安定させながらも自分は自分で幸せに生きてる人ってのは周りを楽にさせるんですよね。

「こうあらねば!」と自分を締め付けて勝手に苦しんでいる人は、周りも苦しめちゃう。
義母がそういう役でしたね。
自分も周りも不幸にしていく人。

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映画館でこんなにヌードシーン見たの久しぶりでした。。
一応セックスシーンってことになるのかな、どこからセックスという定義づけが必要かな。

ベッドシーンっていうのかな?
でもめちゃくちゃ裸だし、割と生々しいことをやってるし。

少子化問題を扱うならそこにはかなり高い確率でセックスの要素が出てくるわけで、
そこから逃げずにむしろ必要以上にヌードシーンを出してくるところも
昨今のメジャー邦画に喧嘩売ってる感じがして面白かった。


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ラストネタバレはコメント欄に。