湾岸に住むランナー

オッペンハイマーの湾岸に住むランナーのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.5
 ラストシーンのアインシュタインとの会話の後で、オッペンハイマーが呟く…『世界を破壊した』…これは、映画の中で一時期心配されたように原爆1固だけで世界が滅びることはないが、1固の原爆が複数の原爆を産み、複数の保有国を産み、やがては世界の破滅を招くかもしれない…そのスイッチを押してしまったということを言っているのか?
 日本人としては、原爆に関する作品と言えば、ノーモア広島、ピースフロム長崎と、原爆の悲惨さや平和の重要さをテーマとするものが思い浮かぶ。
 しかし、この映画は、それよりも、原爆の父となった苦悩や、原爆を生み出す人間の罪深さの方を主題としている。
 原爆を扱った作品としては底が浅いと言わざるを得ないが、人間の浅はかさを描いたと思えば、ある程度は納得できる。
 三つの時制による話が入れ替わりながら展開するので、最初の30分間は戸惑った。世界史に疎い私の連れは、何が何だかだったらしい…。原爆の製造に移ってからはテンポアップして、まあ楽しめた。
 誰にでも欲はある。金欲、名誉欲…多かれ少なかれ、誰にでもある。だから、オッペンハイマーを誰も笑うことはできない。