足拭き猫

獰猛の足拭き猫のレビュー・感想・評価

獰猛(2021年製作の映画)
3.8
強固なバディにはなりきれない男3人のバディ物。
近藤が山田の代わりに喋る道化役だとしても相当にお調子者なのでイラっとするし、過去に影のある主人公山田は強烈に寡黙であるし。
本流にいた人が簡単にそこから外れ、あっという間に隅に追いやられる現代で、世捨て人になることを選ぶのは生き方として正しいのかもしれない。彼らは過去の夢にすがる代わりにこの先の人生を諦め、穏やかに過ごす。医者も山田を同じ心境で見守っている(森了蔵のグラサンがいい味を出している)。

60間近の2人に、いじめられている高校生の亮平が加わる。若い人に希望を持って生きろと諭す言葉はいい加減。でも彼らと関わることでおじさんたちの心の底に残る火がある時に燃え上がる。

警官や浮浪者など、夜の街で放浪する男たちに愛着があるんだなぁというのが伝わってくる。弱き者が強き者をくじこうとするのも大阪芸術大学の伝統を受け継いでいるようにも。

明け方近い海辺で戯れたあと、3人が楽しそうに歩く場面で単独のサックスの音からフルオーケストラになるところの高揚感が素晴らしい。いじめの一つの方法として亮平がスリをする現場をビデオで盗み撮りしてクラスメイトに晒すのだが、自分の弱い姿を客観的に見せられるのは拷問なのだなと思った。

途中から山田が消えて、近藤がメインになるところで転調して驚く。それは遊び心だとしても、ラストは過程をきちんと見せた方がいいのではないだろうか。でないと雰囲気に逃げているようにも感じてしまった。

ヤクザの長の人が北野武に感じがすごく似ていると思ったら本人のTwitterのタイトル画像がたけしだった。
ざらつきがフィルムかと思いきや、4Kカメラということでちょっとびっくり。