じょうだいさんの映画独白

シラノのじょうだいさんの映画独白のレビュー・感想・評価

シラノ(2021年製作の映画)
4.3
主に歴史ものや古典文学などのマスターピースを映画化するジョー・ライト監督。その映像化には常にその題材なりの「異質な表現」が組み込まれている。

本作はミュージカル映画になるが、その本領を発揮するのに少し時間を要する。序盤はキャラクターの紹介と、あくまでもドラマに重きを置く映画であると提示される。監督作の中でも、かなり生々しく主要キャラを映し出していく。

やがて物語が本格的に動き出したところで、ミュージカル映画として全ての波長、ギアが噛み合い高速回転していく。喜びも葛藤も感情が音楽と共に膨れ上がっていく。

シラノの言葉は詩となって、クリスチャンの仮面を被ってロクサーヌの心に入り込む。その強い情念はやがて愛撫に変わる。

既に古い価値観となって共感が生まれにくくなりつつある古典戯曲を、独自の方法論でアップデートを図る事で、現代人に届け、後世に遺す。その在り方を提示してくれたように思う。

レビュー動画
https://youtu.be/9XLk4niIN9Q