このレビューはネタバレを含みます
クルド人の歌(Dengbêj)についてのドキュメンタリーフィルム。
クルドのアイデンティティ、ナショナリズム形成には、一つには歌が寄与してきたのではないかと(勝手に)思っていたのだが、それを裏付けるような内容で、やっぱそうだよねと確信を深めた次第。
一方で取材はトルコ国内・クルマンジ語圏のみで(日本からのツテを考えるとやむを得ないけど)、気になるイラク・ソラニ語圏への越境・共有の具合がどの程度なのか、その辺の確認は今後の課題だなと思ったりもした。
また人々がその歌について語らない(語りを躊躇う)様子からは、トルコの同化政策の苛烈さが言外に滲み出ていて、それでもDengbêjは人間の苦しみや愛を歌ってきたというのは大変心に沁みる美しいものだと感じた。
一方でDengbêjとは違うかもだけど"Keçê kurdan"など「女性兵士という難題」に関わる歌とか、その辺りをどう考えるべきか…。政治的に厳しい状況にあるからこそ闘争の動員に用いられる側面もあることも、念頭に置いておく必要はあるのではないかと感じた。
(けどまあ難題すぎて踏み込みにくいし、少し勉強すれば言わずとも否応なく感じさせられるものでもあるか…)
色々ゴチャゴチャ考えたけど一周回って、やっぱり歌っていいよねと、その美しさ、素晴らしさを改めて感じた。