爽

約束の爽のレビュー・感想・評価

約束(2021年製作の映画)
3.0
☆☆☆:一見の価値アリ
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フランス映画祭2021横浜/イオンシネマみなとみらい にて鑑賞。
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とあるパリ郊外の市長(市の名前は明かされない)=イザベル・ユペールが集合住宅の救済計画というマニフェストを実行すべく、政府と市民の間で闘う政治サスペンス。
雨漏りが進み今にも水没しそうな団地という衝撃的なシーンで幕を開けるが、全体的には映画的な享楽に欠けていた印象。
題材が複雑なだけに、観る側としても前提知識が無いとディテールを拾えない。
とはいえそれは観客のリテラシーの問題なので、硬派な政治劇としては上質な映画だったように思う。
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イザベル・ユペールの佇まいがとても素敵で、顔の皺さえ無視すれば美魔女と言っていいんじゃなかろうか。
とにかく威厳があり、それでいて腰は低い魅力的なキャラクターに仕上がっていて観客の目を釘付けにさせる。
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集合住宅の問題については恥ずかしながら後追いで論文をリサーチして知識を補ったが、集合住宅は住人の共同財産でありながら、フランスでは運営が立ち行かなくなると実際公権力が介入できるというのも衝撃的だった。
どうにも団地存続の為に市長がヤキモキするという構造が腑に落ちなかったが、その事実を知って「そういう話だったのか」と納得した。
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中途半端な進捗の団地救済計画を完遂するには、党内に敵を作っても市長存続の為に3期目(だっけ?)の選挙に立候補しないといけないというのは民主主義の歪さを感じずにいられなかった。
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日本だと近年の政治劇は「新聞記者」くらいしか思い浮かばないが、劇伴やカット割りを駆使したサスペンス演出は本作には無く、却って自分は好感を持った。役者への信頼があれば、硬派な劇に芝居外で緊張感を演出する必要は無いだろう。
爽