靜さんの映画レビュー・感想・評価

靜

異人たち(2023年製作の映画)

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オープンリーゲイであるアンドリュー・ヘイ監督が、主人公の設定をゲイ男性に変更し(演じるのは同じくゲイを公表しているアンドリュー・スコット)、自身が実際に生まれ育った家で撮影をするという私的な要素を濃厚>>続きを読む

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)

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ロマンティックの向こう側の物語だった。
びっくりした。びっくりするぐらい何も起きなくて!
“何も”というのはロミジュリよろしく外部要因による困難とかライバル出現とかはたまた死を匂わせてみたりとか、ロマ
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オッペンハイマー(2023年製作の映画)

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感情の起伏は鈍く感動しない良い映画だった。
感動は物事をどこかあやふやに収束してしまう力があるくせに扱いやすくて性質が悪いから、わたしは戦争や暴力装置を扱った作品で感動したくない。オッペンハイマーには
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同級生(1998年製作の映画)

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高校生の頃めちゃくちゃ見たかった作品。TSUTAYAにあるわけもなく途方に暮れて十数年後にまさかアマプラで再会するとは。拝んだ。今公開されましたと言っても遜色ないと言うとあれだけど、だいぶ前のめりに時>>続きを読む

正欲(2023年製作の映画)

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昔読んだ『デス・パフォーマンス: 倒錯と死のアモク・ジャーナル』を思い出した。医学誌やFBI資料から自慰死、自己頭蓋貫通、自己去勢、四肢切断愛好、緊縛、獣憑きなどの実例を紹介する内容で“衝撃的で理解不>>続きを読む

ストップ・メイキング・センス 4Kレストア(1984年製作の映画)

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最高潮のまま潔く終えたライブの余韻に、明日も生きるぞ〜〜〜〜って謎に湧き上がる意気込みと共に座席から立ち上がれることは、それが生演奏であろうと画面上であろうと大差なく結果に作用するようで嬉しかった。空>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

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男に本を奪われ棄てられたら、すかさず別の本を手渡す女がいて最高だった。めちゃくちゃ好きなシーン。
むせ返る色男であるマーク・ラファロが愛に狂い倒してにちゃにちゃにされている様子を下卑た笑みで見守ってし
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

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「なんか嫌だな〜〜〜」と思うことをしらみ潰しにやる。まるで底辺を知らないように立て続けに起こる「なんか嫌なこと」のわんこそば状態で、観客は居心地の悪さを常に背負わされ神妙な顔で笑えるのか笑えないのか分>>続きを読む

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)

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女と女の物語がたくさん輩出される世の中になってたくさんの女と女の物語を観たけど、この女と女の間にあるものが一番好きだな。一番見たかったものだ。
愛などと言わない。このぐちゃぐちゃに縺れ合って混ざり合っ
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戦場のピアニスト(2002年製作の映画)

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観た記憶があるようなないような曖昧さで観始めて要所要所の場面で既視感はあるのに決定力がなく、終盤のピアノシーンに辿り着くまで白黒つけられなかった。
なんでこんなに記憶が曖昧なのかな。寄る辺なく漂う気持
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アミューズメント・パーク(1973年製作の映画)

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老人たちが遊園地で酷い目に遭う映画。
教育映画を作るのになんでジョージ・A・ロメロに監督オファーしたのかが一番謎でホラーなところなんだけど、ロメロ監督もけっこう真面目に作っていて、真面目に率直に悲惨過
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ブリキの太鼓(1979年製作の映画)

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超能力を持った子供の姿をした大人でピンと来る作品があれば、その影響を想像してにやにやすることが出来る。随分昔に観たので「気味悪い子供が奇声を発してガラスを割る」ぐらいのうろ覚え再鑑賞。
牛頭で鰻を釣る
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カラオケ行こ!(2024年製作の映画)

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原作未読。
未だかつてこんなにX JAPAN「紅」を聴いて泣いたことがあっただろうか。ないよ。そして聡実くんと一緒に豆鉄砲を食らった鳩顔になり、エンドロールの向こう側が永遠に瞼に残るぐらい焼きついて口
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ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)

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漫画の実写化として大満足。
漫画を実写化して欲しいとは特に思わないけど、単純にお金のかかったコスプレを眺めるのは好きだし、肉体の質感が伴う実在性は面白いと思う。特に今まで博物館や資料館で見るだけだった
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窓ぎわのトットちゃん(2023年製作の映画)

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原作未読。
何度か劇場で予告編を観ていたけど、興味よりも拒絶反応の方が強く眉を顰めて眼中から外していた。映画を観る前から内容を決めつけることは愚かなことだと何度やっても学ばないわたしは愚者の極みだと思
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Saltburn(2023年製作の映画)

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もぬけの殻になった広大な屋敷に一人でいて何が楽しいのかしらと思うけど、まるで問題なくて笑った。強い。世界を自分の形に切り取る強者の大学デビュー物語だったね。早稲田松竹とかで「ベネデッタ」と二本立てで公>>続きを読む

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)

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理性があるまま、理性がないかのように無制限の好奇心衝動に駆られる状態に突如陥った人間たちの阿鼻叫喚を眺める話。

台湾に行きたい気持ちを熱くさせる美味しそうな朝食風景を見ていたら、惨劇開始のゴングが突
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黒の教育(2022年製作の映画)

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台湾の青春ホラー映画と言っていいのかな?「怪怪怪怪物!」のインパクトを思い出すお口ぽかんな展開。独特なテンションなのよね〜〜〜!馴染みがないというか予測する展開から微妙にズレ続けることや、それ描写する>>続きを読む

ゴッズ・オウン・カントリー(2017年製作の映画)

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映画祭ぶりの鑑賞。
初っ端からジョニーの孤独、重圧、焦燥、劣等感、すべての鬱屈を詰め込んで破裂寸前の表情に胸ぐら掴まれて泣きそうになる。感情を含めるのが上手い。
美しいが寂しいと形容されるヨークシャー
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TAR/ター(2022年製作の映画)

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ここ数年で直面する課題は「作品と作者を分けて考える(べきかどうか)」ということで、次々と明るみに出てくる面や部分に対する割り切りの悪い気持ち悪さを持て余し続けている。「たかがエンタメじゃん(笑)面白く>>続きを読む

終わらない週末(2023年製作の映画)

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寂しいな。わたしはもう何が起こっているのか分からないまま群盲が象を評するように断片的な情報に右往左往する日々を知ってしまっているから、この映画に貫かれる不穏がとてもリアルなものとして肌を引っ掻いてくる>>続きを読む

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)

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最も印象的だったのは、多言語が縦横無尽に行き来する食卓。単一言語で育った自分には馴染みのない光景で、その土地が歩んだ歴史によって人種も言語も宗教も複数生じてきたレイヤーを浮き彫りにする。言語に馴染みが>>続きを読む

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)

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人間に興味がないのだろうなと推測出来る演技演出に定評(わたしの中でね)がある山崎貴作品らしいドラマパート。徹頭徹尾なぜそんな演出してるの????という疑問に貫かれたお陰で、誰一人として感情移入すること>>続きを読む

クライムズ・オブ・ザ・フューチャー(2022年製作の映画)

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思いを馳せながら観に行ったというのに寝た。後半スヤッて寝た。目覚めたら頭に電動ドリルを突っ込まれている男がいて、寝覚めの悪さが良かった。普段通り2:20起床で仕事をした後にサイゼで腹一杯ご飯を食べてワ>>続きを読む

あしたの少女(2022年製作の映画)

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自分にとって意外だと最近思ったのは、子供が守られていない場面に対して慣りを感じると意識したことで、子供が苦手で好きじゃない根本は変わらないままでも、それはそれとして“子供の人権と尊厳は守られるべき”だ>>続きを読む

福田村事件(2023年製作の映画)

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前半は、古き良き部分を濾過した村社会におけるどろどろに熟れた人間関係を積み上げて、妬み僻み蔑み嘲笑確執卑屈の闇鍋状態。
でも当時のお葬式や寄り合いや食卓やただの道に至る生活風景、村人と行商の人々が纏う
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オオカミの家(2018年製作の映画)

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権力のある小児性愛者、構造的な性虐待、軍事政権下の収容施設、南米に逃亡したナチス残党、国家のような共同体、カルト教団といった個々に興味を抱いた事柄を調べていった時にすべてを兼ね備えている地獄の場所とし>>続きを読む

さらば、わが愛/覇王別姫 4K(1993年製作の映画)

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生きた人生の丸ごと全編に渡って世界が反転するほどの激流に幾度となく翻弄された人間たちの様子を、絵巻物みたいに滑らかに描く。盛者必衰の理が残酷に響くほど、映像の美しさが儚さが眼を潰しにかかってくる。壮大>>続きを読む

メタモルフォーゼの縁側(2022年製作の映画)

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老婦人がBL漫画と出会って魅了されてキャッキャうふふする序盤を観るだけで既に涙が止まらなかった。漫画の続きが楽しみで、仏壇に向かって弾む口調で「まだそっちには行けないわ」と言う場面はユーモラスだし、生>>続きを読む

ひろしま(1953年製作の映画)

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実際に被爆者であり戦争体験者である人たちが作り、演じた映画で「今、ここで、絶対に」作らねばならないという強固な共通意識がある。手加減など一切なく、見て聞いて嗅いで触れた惨状を血肉込めて描く。「はだしの>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

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このレビューはネタバレを含みます

鳥類と集合体への生理的嫌悪ぎりぎりラインをかすめて心に鳥肌を立たせながら観た初見に比べたら、2回目は心穏やかに鑑賞。どんとこいや。

冒頭の下駄を脱ぐ動作、寝間着から着替える動作などの細かな動きの描写
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ニモーナ(2023年製作の映画)

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ピクサーとかディズニーのアニメをあまり観ないからたまに観ると「よく動くな〜〜〜」と思う。表情が豊かだし、移ろって変わる些細な機微も怖いぐらいよく拾うから感情がダイレクトにタックルしてきて怯む。話のテン>>続きを読む

きさらぎ駅(2022年製作の映画)

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都市伝説の映画化において大正解。最高。謎の解明とかどうでもいいって態度が最高だった。
すっごく楽しく鑑賞した!素晴らしい作品かどうかとか質とかそんなん関係なくて、ただただ楽しく鑑賞した。じっとりねっと
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ヴィレッジ(2023年製作の映画)

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「俺が横浜流星だ」と言わんばかりに横浜流星が狼煙を上げた。彼は興味を持てない作品にばかり出ていたし顔を覚えられない俳優の一人だったけど、脱皮しようと足掻く心意気を感じられる作品だった。表情の演技が上手>>続きを読む

母性(2022年製作の映画)

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終盤に流れ出すJUJUに爆笑。そこでJUJU!なぜJUJU?物語を壊すJUJU!陳腐さに拍車をかける演出を、こうも大真面目に選択出来る監督は誰や…廣木隆一か…作品の質が安定しない彼にこの物語を監督する>>続きを読む

嵐の中で(2018年製作の映画)

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めっっっっちゃ面白くて、
めっっっっっっっっちゃ惜しい!!!!
総合的に面白いのに、細かな部分ではことごとく「それじゃない!!なぜ!そうする!?」という落胆ポイントを地道に積み重ねていって、結果的にな
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