靜

哭悲/The Sadnessの靜のレビュー・感想・評価

哭悲/The Sadness(2021年製作の映画)
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理性があるまま、理性がないかのように無制限の好奇心衝動に駆られる状態に突如陥った人間たちの阿鼻叫喚を眺める話。

台湾に行きたい気持ちを熱くさせる美味しそうな朝食風景を見ていたら、惨劇開始のゴングが突然鳴った。熱した油を頭からかけられた店員男性の白く粘っこく爛れた皮膚の様子を見て「容赦なくやりますんで」と名刺を渡された気分になる。人間の皮膚の下は血肉と内臓なのだと突きつけてくるスプラッターは時々救いになるので嫌いではないのだけど、いかんせん女性蔑視分野でもあるので鑑賞中に冷ややかな気持ちは拭えない。拭いません。

男性が女性を強姦する場面と、男性が男性に強姦される場面(あら!)があったけど、女性が男性を強姦したり女性を強姦する場面はなかった。なんでだろう。(場面がなかっただけであの世界のどこかでは行われていたであろうけど)皆等しく暴力と性欲のリミッターを解除されているのに、なぜ、女性だけが強姦される比率が高いのだろう。残酷描写で話題になる作品はだいたい女性が酷い目に遭う。なぜ男性は女性に強姦されないのだろう。女性に性欲がないと見ている、もしくは低く見積もっているのなら大間違いだ。大勢の女性に嬲りものにされる男性がいても良かったはずなのに、そこはスポットを当てないのね。本筋と関係のないところだけど、主人公にミニスカを履かせたり、対比するような人物を配置し回収するまでの流れとかスプラッター分野の女性の扱いでげんなりする嫌いな部分がこちらでも踏襲されていてげんなりもした。

ただ「この絵面が撮りたい」という明確な着地点があり「どうしたらそれを撮れるのか?」を逆説的に埋めて実現している画面の強さには素直に圧倒される。残虐描写に8割ほど持っていかれても物語の整合性を軽視せず、血塗れで滑りながらも着地を決めている。そういった点が話題にもなったのだろうけど、もう少しドラマ部分を観たかったな〜〜〜〜!次作どんなんぶち込んでくるか注目はしちゃう。
靜